2016/07/15
業種別BCPのあり方
管理組合そのものの脆弱性
これまで、マンションの脆弱性について紹介してきたが、もう一つ問題になるのは、分譲マンションの管理を行う管理組合の脆弱性である。
分譲マンションの管理権は、デベロッパーからの引き渡しの時点をもって、マンションの管理組合に移る。分譲マンションの管理上検討しなければならない項目は多数あり、これらに対応するためには、高い水準の専門知識が求められる。しかし、その主体である管理組合の構成員である区分所有者は、必要な専門的知識を有さない一般市民であることがほとんどである。加えて、近年、区分所有者の高齢化等に伴い、管理組合の意思決定機関である理事のなり手がおらず、実質的に管理組合が機能していない事例も多いとされる。さらに、管理費の滞納や修繕積立金の積み立て不足など管理組合の財政基盤が揺らいでいる管理組合が一定数存在する。
災害等の緊急事態は、これらマンション管理組合自体が抱える脆弱性を誰の目にも明らかなものにする。平常時は、マンション管理会社等に業務委託を行っていれば、最低限の清掃や点検といった対応は行ってもらうことができるため、管理組合の機能不全が問題になることは少ない。しかし、災害等の緊急時には、マンション管理会社自体も被災しており、素早い対応を行えるとは限らない。マンション管理会社が機能していたとしても、マンション管理組合が自ら意思決定しなければならない場面は数多い。
特に管理組合にとって重い負担となるのは、復旧に向けた区分所有者どうしの合意形成である。区分所有法や東日本大震災をきっかけに改正された改正被災マンション法は、区分所有建物が重大な損害を受けた場合に、再建・取り壊し・売却のいずれの選択肢についても区分所有者の5分の4の賛成により決議することを認めた。一方、この合意形成に時間がかかり、被災から6カ月以内に何らかの決議ができない場合、区分所有者は他の区分所有者に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るよう請求することが認められており(区分所有法61条12項)、この権利行使により、一方的に共有関係から離脱することができる。
そもそも大きな被害を受けたマンションの管理組合が建物および敷地に関する権利を時価で買い取るのは、非常に負担が重い。区分所有者が、この請求を行う意思を固める前に一定の合意形成を図っていくことがマンション管理組合の大きな課題となる。
ところが、マンションの区分所有者と一口に言っても、様々な立場の住人がいる。店舗部分の所有者と住宅部分の所有者ではそもそも復旧に向けた方針が異なることがある。住宅部分の所有者でも、実際に居住しているか、賃貸しているかによっても方針が異なることは多い。所有物件を賃貸している区分所有者は、高額な負担を伴う修繕等を忌避する傾向がみられる。
さらに、実際に居住している住宅部分の所有者でも、数棟で構成されるマンションで、1棟が滅失に近い大被害、他の棟は補修対応が可能な被害といった状況においては、全体を1棟とみるか、それとも棟ごとに方針を決めるかで意見が鋭く対立した事例が少なくない。
- keyword
- 業種別BCPのあり方
業種別BCPのあり方の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/10/05
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/29
-
-
-
操作不要の防水板で水害リスクを低減
全国各地で、豪雨災害が頻発している。2026年8月13日には、千葉県内で記録的な大雨が発生し、大きな浸水被害をもたらした。「命を守る行動」が最優先事項ではあるが、建物の浸水被害も防ぎたい。望ましいのは、人も建物も守れる備えだ。防水板や防水扉の設計製造を行う宇根鉄工所(広島県東広島市)では、人手を介さず水の力で起きあがる浮力起伏式防水板を開発している。代表取締役社長の宇根利典さんに、水害リスクに対する備えを聞いた。
2026/09/28
-
-
-







※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方