2016/07/15
業種別BCPのあり方
地盤の沈下による被害
これまで地震災害でも液状化による被害は報告されてきたが、今回は首都圏の広い範囲で液状化による被害が生じた。中でも千葉県浦安市の高層マンションでは、地震によるマンションの躯体への影響は大きくなかったものの、液状化による地盤沈下により建物が浮き上がって見えるようになる「抜け上がり」と呼ばれる現象が広範囲で発生した。千葉大学工学部の小林秀樹教授の調査によれば、浦安市におけるマンションの抜け上がり事例は34例あり、その大きさは平均で28.4センチ、最大80センチに達した。
これにより、建物への出入りに支障が生じるのはもちろん、上下水道管、雑排水管、ガス管等の切断が生じ、水道やガスの供給が中断する事態が生じた。仮復旧までは概ね2週間程度を要したが、本格的な復旧には多くの費用を要することから、長時間にわたる検討が必要になった。
躯体と地盤以外の被害
先に紹介したマンション管理支援ネットワークせんだい・みやぎの調査によれば、このほかにも玄関ドアの開閉障害、エレベーターや階段の損傷、機械式駐車場の使用不能、高架水槽や受水槽の被害が多数報告されている。
特筆しておきたいのが、給湯器の転倒による水濡れ被害の発生である。もともと、国土交通省は、建築物に設ける給湯器については、アンカーボルトを最低3本以上使用してコンクリートに緊結することにより転倒防止措置を行うことを求めている。残念ながら、これらが行われていなかったため、地震動により転倒し、大量の熱湯が下層階に流れ込み、甚大な被害が生じた事例が首都圏から東北地方の広い範囲で報告されている。
これまで紹介したものを含めて、過去の大規模地震におけるマンションの主な被害を表2のとおり取りまとめた。
- keyword
- 業種別BCPのあり方
業種別BCPのあり方の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/09/10
-
相克抱え始まった人権DD 海外の動向と日本企業の対応
ビジネスにおいて、人権尊重への取り組みが不可欠になってきました。欧州では人権配慮を企業に義務付ける法律が次々に施行。米国では強制労働による物品の輸入を差し止める法律が運用され、対応次第では国際的な取引から締め出されかねません。海外の動向と企業の対応を、日本貿易振興機構(ジェトロ)調査部国際経済課の森詩織氏に聞きました。
2024/09/09
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/09/05
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方