第19回 ガス業の事業継続(1)

小山 和博
外食業、会計事務所勤務を経て、(株)インターリスク総研にて 2007 ~ 2017年の間、事業継続、危機管理、労働安全衛生、事故防止、組織文化に関するコンサルティングに従事。2017 年よりPwC総合研究所に参画し、引き続き同分野の調査研究、研修、コンサルティングを行っている。
2016/09/23
業種別BCPのあり方
小山 和博
外食業、会計事務所勤務を経て、(株)インターリスク総研にて 2007 ~ 2017年の間、事業継続、危機管理、労働安全衛生、事故防止、組織文化に関するコンサルティングに従事。2017 年よりPwC総合研究所に参画し、引き続き同分野の調査研究、研修、コンサルティングを行っている。
一口にライフラインと言ってもさまざまなものがあるが、一般的には、水道、電気、ガスが挙げられる。ライフライン供給の中断が市民の生活に与える影響は非常に大きく、ライフライン事業者に期待されている事業継続の水準は極めて高い。
ただ、ガス業※ と一口にいってもその規模はさまざまである。このため、ガス業では、高い事業継続への期待に対し、限られた経営資源でどのように応えていくかを考えていく必要がある。今回は、このような特徴をもつガス業の事業継続を取り上げる。
編集部注:「リスク対策.com」本誌2015年11月25日号(Vol.51)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年9月23日)
ガス業の現況
ガス業は、供給するガスの種類によって、大きく2つに分かれる。LPガス業と都市ガス業である。
LPガス事業者は、石油ガスを供給する事業者であり、都市ガスは、天然ガスを原材料とするガスを供給する事業者である。LPガスは、加圧することで比較的容易に液化することから、ボンベによる個別供給が主な供給形態だが、導管を経由してガスを供給する「簡易ガス事業」と呼ばれる業態も存在する。
都市ガスは、天然ガスが極低温のみで液化することから、導管を経由したガス供給を行う。業態ごとに事業者数、供給件数、供給量を表1として取りまとめた。
事業者の規模に大きな差があるのがガス業の特徴である。
まず、LPガス販売事業者は、消費者件数こそ一般ガス事業に匹敵するものの、販売量では4分の1に満たない市場に約21,000社が存在する。一般財団法人エルピーガス振興センターの調査によれば、資本金で見ると、約9割の会社が中小企業であり、従業者数でも10人未満が8割以上である。簡易ガス事業者の規模は、その9割をLP ガス事業者が兼業で営んでおり、ほぼ同様の状態である。
次に、一般ガス事業者では、首都圏、近畿圏、中京圏をそれぞれ供給区域とする事業者3 社が、都市ガス年間販売量の7割を販売しており、資本金、従業員数なども突出した規模を有する。ただ、全体の8割の一般ガス事業者は従業員100名以下であり、10名未満の事業者も33ある。供給の中断を検討しなければならない緊急事態に活用できる経営資源という点では、事業者間で大きな差がある。
また、ガス業は、ガスの供給に必要な配管の設置やメンテナンスについて、主に管工事業を専門とする工事会社に依存する部分が大きい。ガス事業者において管工事の能力を有していることは少なくないものの、緊急事態からの復旧に当たっては、これら工事会社からの要員確保が欠かせない。
ただ、工事会社への要員確保の依頼にあたっては、事業規模がものをいう部分も大きい。中小のガス事業者であれば、なおさら準備しておくポイントとなる。
業種別BCPのあり方の他の記事
おすすめ記事
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方