2019/02/12
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
図2はレジリエンス・スコアを業種別に集計して比較したもので、金融業がトップとなっている。これは2008年の金融危機以降、当局による規制が厳しくなった結果であろうと考えられている。しかしながら金融業の各社が、規制当局から罰金を課せられることを防ぐために積極的に取り組んでいるにもかかわらず、金融業にとって最大の脅威は「サイバー攻撃によって資産が盗まれたり損なわれたりすること」であり、しかも今後増加することが懸念されているという。

金融業に次いでスコアが高いのが飲食料品(Food & Beverage)と消費財(Consumer Goods)の業界である。近年のICTの発達によってB to C企業の経営環境が急速に変化し(注2)、これによってビジネスモデルの変革を迫られ、主体的にリスクマネジメントに取り組んだために、他のB to B企業よりも様々な備えが進んだのではないか、というのが本報告書における見立てである。
本報告書では以上のような調査結果概要に続いて、テクノロジー、事業変革、ステークホルダーとの関係、規制、ESG(環境・社会・ガバナンス)、投資といった観点からの分析と考察が記載されており、幅広い視野から企業のレジリエンスを考える上で示唆に富む報告書となっている。
■ 報告書本文の入手先(PDF24ページ/約1.8MB)
https://ftiresiliencebarometer.com/
注1)G20にはEUが含まれているので、実際の調査対象国はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、ロシア、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチンの19カ国である。
注2)本報告書では「change and impact of digital convergence」と表現されている。なおdigital convergenceとは1995 年に米マサチューセッツ工科大学のNicholas Negroponte教授によって提唱された考え方で、「デジタル技術や通信技術の発達によって、放送・通信・出版など異なるメディアが一つに収斂(convergence)される」というものである。
(了)
- keyword
- 世界のレジリエンス調査研究ナナメ読み
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方