金融庁は31日、反社会的勢力とみられる関係先に資金を提供していたとして、いわき信用組合(福島県いわき市)に一部業務停止を含む業務改善命令を出した。11月17日から1カ月間、新規顧客に対する融資業務を停止させる。経営管理態勢に重大な欠陥があると判断し、経営責任の明確化を求める。
 金融庁によると、いわき信組では反社に対する現金の提供のほか、反社が所有する法人への融資などが確認された。同信組の特別調査委員会は31日、新たな事実として、不正融資調査の過程で判明した約8.5億円から約10億円に上る使途不明金の大部分が反社勢力に渡っていたと認定。政治団体の街宣活動を中止させるなどと持ち掛けられて反社へ資金を提供していたと指摘した。
 いわき信組の金成茂理事長は同日、いわき市で記者会見し「多くの方にご迷惑をおかけしたことをおわびする」と陳謝。その上で、一連の問題に関与した旧経営陣について、刑事告訴する方針を改めて示した。
 反社との取引を巡っては、金融庁は2019年、西武信用金庫(東京)に対し業務改善命令を出している。いわき信組には東日本大震災発生後の12年、公的資金200億円が注入されているだけに、金融庁の監督責任も問われそうだ。
 いわき信組は業績不振の大口融資先に対し、預金者に無断で開設した口座などを通じて、迂回(うかい)融資を行っていた。巨額の不正融資を長年にわたり隠蔽(いんぺい)したとして、5月に業務改善命令を受けており、今年2度目の改善命令となった。 
〔写真説明〕いわき信用組合の看板=5月30日、福島県いわき市

(ニュース提供元:時事通信社)