2019/02/21
防災・危機管理ニュース

東京都は20日、主に企業の担当者を対象とした「一斉帰宅抑制に伴う事業所運営の模擬体験セミナー」を新宿区の都庁で開催した。法人向けに帰宅困難者対策における人材育成を目的とした都によるセミナーは初めて。47法人から56人が参加し、ゲーム感覚でできる一斉帰宅抑制のための図上訓練を行った。
東京大学大学院工学系研究科准教授の廣井悠氏とSOMPOリスクマネジメントが協力。従業員約200人の企業の付近で最大震度6強の地震が起こった想定。参加者は10チームに分かれ、社員の出勤状況や鉄道のストップ、備蓄の状況も含めた状況の把握をしたうえで、従業員の滞留方針などを決定。さらに「帰宅を望む従業員が発生する」といった、発災後に予想されるイベントが次から次へとカードで配布され、それらへの対応を話し合って決めた。最後に気づいたことを模造紙にまとめ、気づきの共有を行った。
廣井氏は訓練開始にあたり、「首都直下地震で600万人が一斉に災害時に帰宅すれば、都内のいたるところで1m2あたり6人以上の密集地が発生する」と説明。電話ボックス程度の広さである1m2あたり6人は、死者11人を出した2001年に起きた兵庫県明石市の歩道橋事故の一歩手前の密度で、一斉帰宅の抑制を訴えた。SOMPOリスクマネジメントのBCMコンサルティング部企業第1グループ主任コンサルタントの宮田桜子氏は「帰宅したいという理由の主なものは家族の心配」と指摘し、普段から災害時の家族間の安否確認について話し合うよう呼びかけた。
東京都帰宅困難者対策条例では、災害時の一斉帰宅によって起こる救助の妨げや二次災害を防止するため、職場などにとどまるほか、企業による3日分の備蓄などを努力義務としている。この訓練を開催した都総務局では、参加者が各企業にノウハウを持ち帰り活用することを期待しているという。なお、この日の訓練の基となった図上訓練ツール「KUG(企業内滞留版)」は、廣井研究室のホームページからダウンロードが可能となっている。
■KUG(企業内滞留版)
http://www.u-hiroi.net/KUG2_ver1.5.zip
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
収入にゆとりのある世帯ほど防災が進む
リスク対策.comは、会社に勤務する従業員が家庭でどの程度防災に取り組んでいるかを把握するため、インターネットによるアンケート調査を実施。その結果、世帯収入によって備蓄や転倒防止などの備えとともに、地域防災活動への取り組みにも大きな差があることが分かりました。前回に続き、調査結果を報告します。
2022/08/07
-
部分最適の追求が招いた災害リスク極大化
膨大な帰宅困難者、エレベーターの閉じ込め、救助活動の混乱、行き場のない避難者と災害関連死――。首都直下地震の被災シナリオから見えてくるのは、ひとえに集中のリスクです。根本的な解決には分散が必要ですが、一極集中はいまなおとどまるところを知りません。なぜ分散は進まないのか。山梨大学大学院総合研究部の秦康範准教授に聞きました。
2022/08/03
-
-
-
サイバーインシデントの初動対応に関する基本的な知識の整理
本セミナーでは、サイバーインシデントの初動対応に焦点をあて、事前準備と対応について基本的な知識を整理し、今後の対策検討を推進する際に役立つ情報を提供いたします。2022年8月2日開催。
2022/08/03
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2022/08/02
-
-
新型コロナウイルスに感染した場合の労災補償
新型コロナウイルス感染症の感染者は、ワクチン接種の普及により、一時は減少傾向にありましたが、オミクロン株BA5の感染拡大により、感染者が急増し、令和7年7月28日には、東京都における感染者数が4万人を超えて過去最多となりました。 新型コロナウイルス感染症に感染すると、罹患後においても倦怠感やうつ状態、頭痛、めまい、味覚障害など、様々な症状が続くことがあり、それにより就労を継続することが難しくなり、退職を余儀なくされるケースも発生しています。業務により新型コロナウイルスに感染し、それにより働けなくなった場合は、労災保険給付を受けることができます。そこで今回は、業務に起因して新型コロナウイルスに感染した場合に受けられる労災補償について説明します。
2022/07/29
-
企業の新型コロナ対応における法的課題の振り返り
企業の新型コロナへの対応を法的側面から振り返り、次の大規模災害、あるいは新たな感染症の拡大時に向け、どのような対策が必要なのか弁護士の中野明安氏に解説していただきました。2022年7月20日開催
2022/07/28
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方