三協立山株式会社(富山県高岡市)

2024年元日に発生した能登半島地震で被災した三協立山株式会社。同社は富山県内に多数の生産拠点を集中させる一方、販売網は全国に広がっており、製品の供給遅れは取引先との信頼関係に影響しかねない構造にあった。震災の経験を通じて、同社では、復旧のスピードと、技術者の必要性を認識。現在、被災時の目標復旧時間の目安を1カ月と設定するとともに、取引先が被災しても、即座に必要な技術者を派遣できる体制づくりを進めている。

同社は、建材事業のほか、マテリアル事業、商業施設事業、国際事業など国内外で幅広い分野に展開。国内生産拠点としては富山県に12工場、石川県に1工場を有し、地域経済を支える重要な存在となっている。

能登半島地震では、複数の工場で、設備や製品、材料などが転倒・落下した。石川工場では金型が多数落下し、自動搬送システムやラックが損傷した。表面処理に利用する薬品がプールからあふれ出し、中和処理を行う事態も発生した。奈呉工場では、地盤沈下や液状化現象が著しく、工業用水の配管や重油タンクのバルブが損傷するといった被害も顕在化した。

これまで呉羽山断層地震などに備えてBCPを策定していたものの「どこまで徹底すべきか、最低限どこまでやればいいのか迷いながら進めてきました。他社の事例なども参考にしながらマニュアルは整備していましたが、大規模災害に対して具体的に一人ひとりが対応できるものだったかと問われれば疑問が残るし、実際に災害が発生したら右往左往したというのが実態です」と取締役常務執行役員の吉田経晃氏は振り返る。

目標復旧時間についての具体的な想定もなかった。今回の震災では従業員が一丸となった復旧活動に加え、協力会社や取引先の支援があり、1月21日には被災した全工場での稼働再開を実現したが、本格復旧までには日数を要した。今回の地震で得た最大の教訓は、「復旧に時間がかかると取引先からの信頼を失いかねないという危機感」だったと吉田氏は胸の底を明かす。

こうした教訓から、現在では、能登半島地震と同規模の地震が起きても概ね1カ月で復旧できる初動体制や支援体制の構築を目安として掲げている。