噴火の規模と風向き次第で東京にも大きな影響が出る(イメージ:写真AC)

日本には111の活火山がありますが、その中でも、富士山や九州地方の桜島、阿蘇山などは有名です。特に富士山が噴火した場合は、その影響が首都圏に及ぶことが懸念されています。

国は2020年、宝永噴火(1707年)と同じ程度の大噴火が起きた場合は、東京の新宿あたりでも風向き次第で降灰が3センチ以上となる予測を公開しており、国民生活や社会経済活動等に大きな影響があることが明らかになっています。

都市活動を維持するための対策構築が急務となったこともあり、東京都は「大規模噴火降灰対応指針」(2023年12月)を発表しました。

地震や水害に比べると、富士山の噴火は危機感を共有しにくいというイメージがあるようですが、今回は、富士山噴火を考えます。

大規模噴火降灰対応指針

(1)指針策定にあたってのポイント

東京を取り巻く状況を踏まえて、指針は次のような対策をカバーしています。

1)都市機能や都民の生活を守るために、ハード・ソフトの両面から取り組むべき降灰対策を具体化することによって、日常生活や社会経済活動への影響を抑えます。

2)大都市における未曾有のリスクを回避するために、自助・共助の取り組みを推進します。

3)膨大な降灰が想定されており、またその範囲も東京都を越えて広範囲に及ぶことから、国への要望などもとりまとめます。

(2)富士山噴火時の降灰予測

降灰の影響は想像以上に大きい(イメージ:写真AC)

国の中央防災会議降灰ワーキンググループの報告書では、これまでの富士山噴火のうち、火砕物が主である噴火であり、また噴火・降灰の実績が判明している宝永噴火をもとに降灰シミュレーションを行っています。降灰シミュレーションの結果は次の通りですが、我々の想像以上のものとなっています。

・降灰は15日間ほど続くとして計算

・多摩地域をはじめ、区部の大部分で2~10センチ程度以上の降灰が発生


・停電、道路の交通支障、鉄道の地上路線で運行停止の可能性

・都内で降灰が必要な火山灰量は約1.2億立法メートル

・全体で降灰が必要な火山灰量は約4.9億立方メートルとされ、東日本大震災で発生した災害廃棄物量の10倍以上に相当 など

ちなみに、富士山ハザードマップ検討委員会では、2004年6月の報告書において宝永噴火と同規模の噴火が発生した場合の降灰マップを作成しています。都内の降灰への影響も、前述の中央防災会議降灰ワーキンググループの予測と大きく変わりません。

・宝永噴火と同程度の降灰である16日間を想定

・降灰の範囲は、八王子市および町田市の一部が10センチ、そしてその他の地域では、2~10センチ程度

・降灰可能性マップの降灰範囲の外側においては2センチ未満の降灰厚が発生する可能性がある