“個”の力が企業を守る
管理者と一般社員が実践する初動トレーニング

危機管理塾 7月15日

日本精工株式会社 生産本部 危機管理推進室
阪下健作氏

危機管理塾をリアル開催。日本精工の阪下健作氏がBCMS活動の取り組み方針や実践例を発表

組織の災害対応力は従業員の自助力なしに成り立たない

危機管理塾は7月15日、東京・千代田区の朝日ビル会議室で開催した。ベアリングメーカーの日本精工でBCMSに携わる危機管理推進室グループマネージャの阪下健作氏が、自社の災害対応力の強化について発表。従業員の個の力を高めることを目指して行っている訓練の内容などを説明した。

同社は2023年、BCMSの取り組み方針を大幅に軌道修正。効果や実力値が目に見えないことが問題となったためで、阪下氏は「活動が復旧曲線の改善にどう寄与しているかがわからない。そのためBCMSは目標を定め、達成に必要な対策を洗い出して一つ一つ実施していく方針に改めた」と振り返った。

また、直後に起きた能登半島地震で、正月休み中の災害における対策本部の設置や安否確認の実施に関する課題が浮上。同社も経営者への情報共有が遅れたとし「結局、早期の事業再開には初動対応が重要。そして初動対応には個人の力がものをいうことに気がついた」と述べた。

そのため同社は「組織の対応力は従業員の自助力の強化なしでは成り立たない」という考えを根本においてBCMSの方針を再設定。災害時に個々に期待される事後対応力を徹底して鍛えることを目的に、新たに「課題解決型(インバスケット型)訓練」と「体験型(サーキット型)訓練」を導入した。

課題解決型訓練は職場リーダーが対象で、災害時に起きることをシミュレーションしながらシーンごとにやるべき行動を書き出していく。その後答え合わせを行い、グループに分かれて課題を議論、発表。「解決に向けてすぐ取り組めるものは3カ月以内、準備が必要なものは1年以内に取り組んでもらう」とした。

体験型訓練は全従業員が対象で、災害時の負傷者の手当てや担架搬送などを実技で体験。75分を1ラウンドとし、これを1日に5ラウンド、各40人ほどの参加で行う。工場を中心にこれまでに計8回実施し約1500人が体験したが「非常に満足度が高い」と述べた。

満足度の背景として阪下氏は「事業継続優先のBCMSを初動対応優先に転換したことが大きい」と指摘。「初動対応優先とは、すなわち従業員の安全確保を最優先する発想。それは必然的に、職場内の負傷者は必ず救助・救護するという考え方につながる。結局それが事業再開への近道。そうした我々の思いが経営者に伝わり、従業員をあと押ししている」と話した。

参加者の声

 

・サーキット型の訓練を検討しているのでとても参考になりました。
 

・自助力を上げることが重要であること。そのための訓練の実施について、大変有意義な情報をいただきました。


・初動対応の大事さ。社長を含め会社としてどう取り組みするか。シミュレーション訓練より実地訓練で体験する大事さを知りました。


・実際の活動内容を教えていただき勉強になりました。


・トップを動かす力、我々も課題ですので参考になりました。


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