2019/04/26
危機管理の神髄

重要なインフラへの最大の脅威
もちろん重大なインフラへの脅威は悪人だけではない。9.11の後、ニューヨーク市の災害専門家は人為的脅威のリスクに集中したが、ときどきは母なる自然は我々を自然災害の方へ引き戻した。これまでの20年間、ニューヨーク市は熱波、雪嵐、竜巻、ハリケーン、さらには地震をも含む自然災害の猛襲に耐えてきた。
ほとんどの巨大都市と同様にニューヨーク市は郊外や田舎の地域に比べて自然災害の数が多いし、その影響に関してもより脆弱である。中でも洪水、かんばつ、ハリケーンは最も破壊的な脅威である。気候変動が将来の大災害の影響を激化させるので、これはさらにひどくなるであろう。2017年にハリケーン・マリアに襲われたプエルトリコのように、自然災害は個々のシステムだけでなくその地域のインフラの全体を脅かす。
この本について
―マイケル・D・セルブズ 国土保障・緊急事態管理部長
カンサス州ジョンソン郡
災害ビジネスにおいては、リスクは事故発生確率(頻度)とその結果(強度)の積に等しい。この本の前提は我々の超モダンの社会では、このリスク等式のどの変数もあなたが考えるより高いということである。
我々は連続して発生する自然災害と人為的災害の脅威の衝突針路に乗っている。これは厳しい現実であるが、今日では多くの人が前途にある何らかの災難の気配を感じている。大体の人はそれを否定することで何とかする。悪人あるいは母なる自然がどんな災いを投げかけてこようが我々は準備ができている。それを確実にするためにたくさんの人が報酬を得てそこにいる。そう信じることによって不安を和らげようとする人もいる。それは一面の真実である。全米の、ビジネス、産業界、政府の災害専門家は災害に備えて24時間仕事をしている。しかしとても十分な数とは言えない。そしてこの後見るように間違った仕事をしている人もいる。その結果は、我々は国としてはとても最悪のシナリオに対する備えがあるとは言えない、ということである。
この後のどの頁もその洞察を伝えるためのものである。あなたは大災害に対する準備はできていない。政府はできているだろうと思うかもしれないが、政府も大災害に対する準備はできていない。
この本は何故そうなのか、いかに我々はその窮地に陥ったのかを説明する。あなただけではなく誰もが大災害の脅威は否定するという論点から始める。“すべての災害の母”と言われる最悪のシナリオの物語が続く。今それが起きたらどのようなことになるかを描写する。さらに災害が作り出す“パラレルな宇宙”と、そこで災害専門家が効果的であるためには何が必要かを述べる。最後にあなたとあなたの家族が大災害に備えるためのシンプルなステップを提示する。
我々の集団的なレジリエンスの状態と政府は準備できていないというのは悪い話である。良い話も少しはある。ニューヨーク市をはじめとするいくつかの政府は優れたシステムを持っている。それは大災害の被災者を探索・救助する政府の対応を加速させるものであり、国と世界の範となるものである。
(続く)
翻訳:杉野文俊
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300
おすすめ記事
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/08/19
-
-
-
-
「自分の安全は自分で」企業に寄り添いサポート
海外赴任者・出張者のインシデントに一企業が単独で対応するのは簡単ではありません。昨今、世界中のネットワークを使って一連の対応を援助するアシスタンスサービスのニーズが急上昇しています。ヨーロッパ・アシスタンス・ジャパンの森紀俊社長に、最近のニーズ変化と今後の展開を聞きました。
2025/08/16
-
-
白山のBCPが企業成長を導く
2024年1月1日に発生した能登半島地震で震度7を観測した石川県志賀町にある株式会社白山の石川工場は、深刻な被害を受けながらも、3カ月で完全復旧を実現した。迅速な対応を支えたのは、人を中心に据える「ヒト・セントリック経営」と、現場に委ねられた判断力、そして、地元建設会社との信頼関係の積み重ねだった。同社は現在、埼玉に新たな工場を建設するなどBCPと経営効率化のさらなる一体化に取り組みはじめている。
2025/08/11
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方