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8月30日金曜日 正午 ニューヨーク州バルハラ、ウェストチェスター・コミュニティ大学、ハンキン・アート・センター 

メガJFOの広い大講堂は立見席のみとなっており、その中を大統領はステージを横切って演壇に歩み寄る。

「今、国土安全保障省のオジャミ長官と他の閣僚メンバーからニューヨーク市の現状に関する最新情報を入手した」

「われわれの思いと祈りをニューヨーク市民とこのとてつもない悲劇に見舞われたすべての同胞にささげましょう。わからないことはあまりに多いのですが、われわれが今知っていることをお伝えします。昨日、現地時間の午後4時4分ころ、およそ10キロトン、TNT爆弾の1万トンに相当する核爆発装置がニューヨークのタイムズスクエアで爆発しました。誰がやったのかはまだ不明ですが、この悪魔の攻撃の威力は凄まじいものでした。マンハッタンのミッドタウンのほぼ全域が破壊されました。数千人、おそらくは数十万人が死亡し、それをさらに上回る数の負傷者がいて緊急の医療を必要としています。しかし救助の努力は多くの困難に妨げられています。市は分断され、すべての道路・橋・トンネルは遮断されています」 

「私はニュージャージー州とコネチカット州の知事と話をしました。ニューヨーク市と州の双方の公選役人とのコンタクトも試みています。まだ連絡はとれていませんが引き続きやっています」

「ニューヨーク市OEMが警報を鳴らし市民を屋内に避難させました。それは英雄的な努力です。指示は爆発の直後に出されたので、多くの市民の救命と安全確保に役立ちました。爆発のハザードはわれわれを脅かし続けています。被災地の皆さんは自治体からの命にかかわる指令を今後も守ってください。シェルターにいるように言われたのなら、それを続ける必要があります。退去するよう言われたなら可能な限り速やかに避難してください。われわれの科学者はそうすることが安全であるという見極めがつき次第、みなさんには安全な場所に移動していただくよう地方の自治体と話し合っています」

「さて本日は、われわれが今、国として何をしているかをお話します。私は昨日の午後、爆発から数分後に国家核対応計画を発動させました。スタンレー・マクリスタル前大将を国家インシデント司令官に任命しました。連邦政府がこの大災害への対応を指揮しています。その国家的な努力の本部は、昨日の攻撃現場の真北40キロのニューヨーク州バルハラにあります」

「われわれの努力は3つの優先事項にフォーカスされています。第一は救命です。作業が安全な場所では消火活動をしています。そのエリアでは捜索・救助活動をしています」

ABCニュースのキャサリン・ホールダースが大声で言う。「大統領、ニューヨーク市からの映像はぞっとするほど恐ろしい。路上では数千もの人が死んでいます。あの人たちを助けるために何をしているのでしょうか?」

「今は捜索・救助チームが崩壊した建物やがれきの下敷きになっている人を救い出しています。トリアージの拠点を設けて負傷者の治療に当たっています。傷病者のために被災地域外、および全国の病院を組織化しています。被災地域外の病院へ大勢の患者を避難させようとしています」

ホールダースが続ける。「ウイーホ―ケンに向かってリンカーン・トンネルを歩いていた人たちはどうなるのですか? 警察は止めようとしていません。あの人たちのシェルターはどこにあるのでしょうか?」

「われわれは被災地に残っている市民の避難をサポートしています」と大統領が返答する。「シェルターを提供してくれるニュージャージー州とコネチカット州に感謝したい。ペンシルベニア州とマサチューセッツ州にもこの国家的危機のときにもっと何かをできないか呼び掛けています」

「それらの個人と家族には緊急時の援助を提供すべく動いています。われわれはあの人たちに援助の手を差し伸べ、家族が一緒になれるように集中しています」

「汚染された人の検査や除染などを含む大規模な汚染除去作業の組織化を始めているところです」

「遺体を回収し親族のもとへ返すという国家大量死計画を発動しました」

「道路・橋・地下鉄・空港・病院・通信システム・電力水道システム、などの重要インフラへの被害評価を始めています。もちろんこのビルも含めてのことです」

ホールダースがうっかり口走る。「この状況はいつ収まるのかしら?」

「私が今言えるのは復旧には長い時間が必要だということです。何年もかかるでしょう。しかしわれわれは州や自治体とともに長年の間これを計画し、準備ができていました。すべての機関と部局(連邦・州・自治体)の資産はこのニューヨークにあるか、ここへ来る途中にあります。私は確信を持って言えます。この偉大な国の中でも最優秀の人たちが地域合同現場オフィスで、われわれと共に仕事をしています。われわれのベストの精神とベストの思考がこれに捧げられています。われわれは誰をも、何をも手にしています。ニューヨークの人々を助けることがアメリカ合衆国の目下の最優先事項なのです」

大統領は間をおいて、周りを見回してから、大勢の人たちと目を合わせる。「他に質問は・・・?」