2019/04/22
安心、それが最大の敵だ
勝利と三国干渉
日清戦争は日本軍の勝利で終結し、明治28年4月17日、日本側全権伊藤博文、陸奥宗光、清国側全権李鴻章、李経方が下関の春帆楼で講和会議をもち、出講和条約に調印し後に批准書を交換した。下関条約(日清講和条約)の主な内容は(1)朝鮮の独立の承認(2)遼東半島、台湾、澎湖列島の割譲(3)賠償金2億両(テール、約3億円、当時の日本政府国家予算の3倍半とされる巨額)の支払いーなどであった。
講和条約締結からわずかに6日後、ロシア、ドイツ、フランス3国の在日公使が相前後して外務省を訪れ、外務次官・林董(はやし ただす)に面会して、本国からの遼東半島を日本所有とすることに反対する旨の口上書を提出した。三国干渉である。大鳥圭介は外務大臣陸奥宗光宛に書簡を送った。
「(前略)。偖(さて)昨今諸公が心魂を砕事は、露独仏に対し金州半島(遼東半島)の取捨如何の点に可有之哉に被察候。右は左まで心配可致大事件とは不被存候。愚説を左に記し為御参考申上候。三国の申分は金州半島を日本は永久所有するや、又は一時の占領に止まる主意なるやの点に有之候。
日本は之に答えて曰く、我邦は彼地を永久所有の考えには無之、一時戦勝の利にて之を占領候に止まり、清国に対し償金払込其の外の約定実行迄を目的とし、条件皆済みの上は清国へ返還すべしと云うべし。
金州返還の期は三年または五年の後に在るべし。故に今俄(にわか)に海戦を三国に対して開くは極めて拙策なり。且つ又甚危し。(以下略)
五月五日 圭介
外務大臣殿」(「伊藤博文関係文書」)。
大鳥が書簡で提案する、清国が条約上の義務を履行するまでは遼東半島を占領する権利を持つ、との日本側の解釈はドイツ、ロシアが拒否した。書簡と同じ日付の5日、外務大臣陸奥宗光は三国政府に回答を出した。
「日本帝国政府は、露、独、仏三国政府の友誼(ゆうぎ)ある忠告に基づき奉天半島を永久に占領することを放棄することを約す」。三国干渉に対する外交上の敗北宣言であった。
参考文献:拙書「大鳥圭介」、国立国会図書館及び筑波大学附属図書館文献。
(つづく)
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/08/05
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/08/04
-
-
-
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27
-






※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方