入間川中流部(現在、飯能市内)

方丈記は災害文学

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖(すみか)と、又かくのごとし。…朝(あした)に死に、夕べに生るるならひ、ただ水の泡にぞ似たりけり…」

鴨長明(1155~1216)の「方丈記」の冒頭部分である。鎌倉初期の名だたる随筆集であり、人生の無常観を活写した文学作品として知らない人はいない。この著名な作品は、また傑出した「災害文学」とも言えるもので、同時代の都・京都を襲った地震・風水害・火災を活写してやまない。過去にも触れたが生き地獄とも言える描写も少なくないのである。

災害列島日本、平成は大災害が多発
https://www.risktaisaku.com/articles/-/17975

今日の「土木建築」の意味で、鴨長明が「方丈記」中に「土木」の言葉を使っていることにも注目したい。「土木」との専門用語がすでに鎌倉時代には使われていたようである。