2016/05/13
スーパー豪雨にどう備える?
教訓その4
自治体の災害対策本部に民間部門のリエゾンを組み込むべき
ニューヨーク市危機管理センターの災害対策本部には150席の民間企業用の席があり、ライフライン企業や業界団体の代表者らはリエゾン(現地調整・情報連絡員)として災対本部の情報を直接把握できるようになっている。例えばハリケーン・サンディでは高潮によって沿岸部の製油所、給油所の機能がストップしたが、石油業界のリエゾンはその情報を入手し、本来であれば規制されているニューヨーク州への石油の輸送を災対本部に掛け合い、特別に規制緩和が許され、被災地への石油輸送が可能になったという。
市側もリエゾンを通じて業界に災害対応への協力要請と調整をその場で行うことができるなどのメリットがある。例えば、市が被災者を収容するためにホテルの部屋を確保したければ、ホテル業協会のリエゾンを通じて、市内のホテルの状況を確認し、受け入れがどのくらい可能か知ることができる。
民間企業はリエゾンを通じて自社の事業継続に必要な情報を入手でき、行政の災対本部も民間企業に対して協力などを依頼することができる仕組みだ。
「災害時にリエゾンの存在は非常に重要。日本でも自治体の災害対策本部に民間部門のリエゾンを正式に組み込むべきだ」(渡辺氏)。現在、京都府では災対本部に民間企業の窓口を設置することを決定し、情報共有の詳細について官民で検討を開始したという。
教訓その5
地元企業に配慮し、臨機応変に物資を配給できる仕組みを構築すべき
ニューヨーク市は災害時にも、地元中小企業への配慮を行っている。災害時の中小飲食業の被災状況を電話で自動的に把握するシステムがあり、マンハッタン内のレストランなどの被災情報がGIS(地理情報システム)経由で災対本部の地図上にプロットされる。営業継続、もしくは営業可能なレストランがあれば、そのエリアには意図的に救援物資を届けないこともある。市やFEMAが被災者に無料の物資を配給してしまうと、せっかく生き残ったレストランへの客足を減らすことになり、結果的につぶしてしまうことになりかねないからだ。逆に、オープンしているレストランには、市に代わって被災者に食事を提供してもらうなどの対策もできる。発災直後にもどれだけ地元企業が生き残っているかを把握することで、効率よく物資の配給調整を行うことができるという。
「災害時においても自治体とローカルビジネスが連携し、Win-Winの関係を築くことが、速やかな地域復興につながる」(渡辺氏)。
スーパー豪雨にどう備える?の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/07/05
-
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/07/01
-
-
-
「ビジネスイネーブラー」へ進化するセキュリティ組織
昨年、累計出品数が40億を突破し、流通取引総額が1兆円を超えたフリマアプリ「メルカリ」。オンラインサービス上では日々膨大な数の取引が行われています。顧客の利便性や従業員の生産性を落とさず、安全と信頼を高めるセキュリティ戦略について、執行役員CISOの市原尚久氏に聞きました。
2025/06/29
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方