2012/03/25
誌面情報 vol30
事業継続マネジメントの国際規格として注目されるISO22301の最終案がこのほど発表された。この規格案にいち早く準拠した体制を整え、他のマネジメントシステムと統合運用を開始した会社がある。同社の取り組みと、ISO22301の最終規格案の内容を紹介する。
品質、情報セキュリティと統合運用 ニュートン・コンサルティング |
ニュートン・コンサルティング株式会社(本社:東京都千代田区)は2月29日、BCM(事業継続マネジメント)の国際規格として注目されていたISO/FDIS(最終国際規格原案)22301に、世界最速で自己適合宣言したと発表した。
BCMの国際規格については、ISO(国際標準化機構)のTC223(社会セキュリティ)専門委員会が中心となって、2006年からその開発に乗り出し、日本も内閣府の事業継続ガイドラインを提案するなど、その動向が注目されていたが、2月1日にISO22301 ( Societal security. Business continuity management systems)という規格の最終案が英国規格協会から発表された。
これを受け、ニュートン・コンサルティングでは、これまでに構築してきた事業継続体制を、ISO/FDIS22301の要求項目に合致するように改善し、このほど自己適合宣言した。同社によると、今回の自己適合宣言は、おそらく世界で最速と話している。
■ISO27001、9001との統合運用を実現
同社はこれまで、BCMについては英国の事業継続マネジメントシステム規格であるBS25999-2に準拠した活動を行ってきた。それ以外にもマネジメントシステムについては、品質マネジメントシステム(ISO9001)、情報セキュリティマネジメントシステム(ISO27001)を構築し、3つの規格の統合運用をしてきた。
今回の自己適合宣言は、ISO/FDIS22301に準拠しているだけでなく、ISO9001、ISO27001、ISO/FDIS22301の3つの国際標準規格に対し、自社にて構築・運用しているマネジメントシステムが適合していることを自ら宣言するものだとしている。
同社、代表取締役社長の副島一也氏は、第3者認証ではなく、自己適合宣言にした理由について「ISO規格に準拠するために第三者による審査を受けることは重要だが、当社が構築した統合マネジメントシステムを効率的かつ効果的に評価することは、既存の審査の仕組みでは難しい。そのため、当社は第三者認証の取得に代わり、自己適合宣言をし、当社の取り組みを社外へ公開することで、継続的な改善を実現すると決めた」と話している。
また、自己適合宣言の目的については、「マネジメントシステムの構築・運用支援コンサルティングを生業にしている以上、弊社自身がその価値を最大限に活用できていなければお客様に対しても、誠実かつ信頼感のあるサービスが提供できるはずがないと信じている」(副島氏)とした。
■統合マネジメントの仕組み
品質(ISO9001)、情報セキュリティ(ISO27001)事業継続、(ISO/FDIS22301)といった各種マネジメントシステムは、基本的にはPlan (計画)、Do (実行)、Check (監査)、Act (改善)の、PDCAサイクルで構成されている点は共通している。
同社では、各マネジメントシステムを統合するにあたり、まず、D(実行)を除いた、P(計画)、C(監査)、A(改善)について、国際的なガイドラインにもとづいて共通化。その際、各マネジメントシステムの要求項目に抜け漏れが出ないように、すべての要求事項が相互参照できる表をつくり、①適用範囲、②方針、③年間運用計画、④体制、⑤法規制管理、⑥文書管理、⑦変更管理、⑧力量管理、⑨内部監査、⑩マネジメントレビューといった、統合ルールとしてまとめた。
D(実行)については、各マネジメントシステムに特化した個別ルールを策定し、運用している(図1)。
■統合MS推進チームが全体調整
統合したマネジメントシステムを効率的で効果的に運用できるように管理体制も見直した。具体的には、経営者をトップにIMS(統合マネジメントシステム)推進チームを置き、その下に各マネジメントシステムを推進するチームを設け、各マネジメントシステムから上がってくる個別の課題や変更点などを吸い上げ、他のマネジメントシステムとの調整や報告を行うことで常に情報を共有化できるようにした。またIMS推進チームが窓口となり、社内への周知教育やマネジメントレビュー、内部監査などの調整も実施している。
■文書体系
各マネジメントシステムの文書も共通化した。具体的には①方針書、②規程、③マニュアル・手順書、④様式の4種類に分類し、統合リスクマネジメント方針を最上位文書とし、統合リスクマネジメント規程を策定し、共通ルールを定めた(図2)。
マニュアル/手順書は各マネジメントシステムの個別管理ルールを記載し、個別に改善する際に、メンテナンスが効率的に実施できるようにしている。
さらに、年間計画やリスク対応計画、内部監査に関する記録などは、一元管理できるよう共通の様式を使用している。
■内部監査
内部監査については、年1回ですべてのマネジメントシステムを対象に実施できるよう、個別ルールや規格内容を整理したクロスリファレンス(相互参照表)を用い、内部監査シートを作成。結果報告書や、結果の詳細となる指摘事項の一覧をつくることで一元的に管理できるという。各マネジメントシステムに特化した個別ルールについては、その部分を切り出した内部監査シートを用い、結果を共通の報告書、一覧に付け加えている。このほか、年間の運用計画についても経営と一体化させ効率化を図っている。
誌面情報 vol30の他の記事
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方