第14回 「AIウォッシング」とは?
誇張する故のリスク
鈴木 英夫
慶應義塾大学経済学部卒業。民族系石油会社で、法務部門・ロンドン支店長代行・本社財務課長など(東京・ロンドン)。外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務め、危機管理広報・リスクマネジメントを担当(大阪)。現在は、GRC研究所代表・研究主幹、リスクマネジメント&コンプライアンス・コンサルタント(兵庫)。日本経営管理学会会員、危機管理システム研究学会会員。
2026/02/07
新 世界のリスクマネジメントの潮流
鈴木 英夫
慶應義塾大学経済学部卒業。民族系石油会社で、法務部門・ロンドン支店長代行・本社財務課長など(東京・ロンドン)。外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務め、危機管理広報・リスクマネジメントを担当(大阪)。現在は、GRC研究所代表・研究主幹、リスクマネジメント&コンプライアンス・コンサルタント(兵庫)。日本経営管理学会会員、危機管理システム研究学会会員。
テクノロジーに対する楽観的な見方がある一方、理解度は低く、規制当局の監督がイノベーションに追いついていない状況で、企業は「次世代人工知能」が自社のビジネスを変革し、競合他社を凌駕するだろうと、大胆な公言を発している。残念ながら、できすぎた主張は往々にして現実離れしている。実際、多くの企業はAIの活用範囲、そしてその真の能力やメリットについて、誤解を招くような発言をしたり、嘘になったりしている。
長年にわたり、多くの企業が「AIウォッシング」*)を行ってきた。すなわち、AIソリューションの開発レベルや導入状況を誇張したり捏造したりすることで、AI技術が実際よりも重要であるという印象を与えようとする、欺瞞的なマーケティング戦術である。ビジネスコンサルティング会社Cruxy社のCEO兼創業者であるキャリー・オスマン氏によると、AIウォッシングは「誇大宣伝に囚われ、精査に堪えない市場の兆候」であり、取締役会が「AIを活用した取り組み」を迫られていることで、状況は悪化している。
*)訳者注:「AIウォッシング」(AI washing)とは、企業や組織が自社の製品やサービスにおけるAI(人工知能)の使用を誇張したり、虚偽の主張をしたりする行為を指す。
「どの企業もAIを活用していると言いたがるが、現実は誇大宣伝に陥っている」と、コンプライアンス・アドバイザリー会社De Risk Partnersの創業者、ラヴィ・デ・シルバ氏は述べている。「このような現象は他のテクノロジーサイクルでも見られた。大き過ぎる約束、急速な資金調達、そして十分な監督の欠如だ。今回の違いは、導入のスピードと、AIが企業価値やビジネスモデルにどれほど深く結びついているかである。」
AIウォッシング戦術に手を染める企業は、深刻な結果に直面することになる。顧客・投資家・規制当局を故意に、あるいは不注意に誤解させることで、企業は訴訟や規制当局の調査を受けるリスクを高める。実際にはテクノロジーが何もたらさないというリスクについても保証してしまい、コンプライアンスコストを不必要に増大させることになる。
新 世界のリスクマネジメントの潮流の他の記事
おすすめ記事
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/08
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方