2016/08/08
事例から学ぶ
「リスク対策.com」VOL.56 2016年7月掲載記事
同社では、平成11年の大型台風の被害を教訓に災害対応マニュアルの整備を行い、以来、毎年のように発生する台風のたびに内容を見直してきた。「お客様の被害をいち早く支援することが我々の使命。そのことを全社員が理解している」と小山社長は語る。

社員・パートで120人程の中小企業だが顧客は5000軒にのぼる。台風では、これまでに最も多くの被害が出たのが平成11年台風18号で約1000軒だったが、今回ははるかに上回る約3000軒の修理・安全点検の要請に対応することになった。
前震が起きた翌早朝、小山社長は台風用に整備していた風水害対応マニュアルを地震用に作り替えることを指示。特にブルーシートがけに関しては台風被害の対応手順と大きく変わるため、「余震が収まるまで屋根に上らない」など、社員の安全確保を最優先することを呼び掛けたという。
さらに、建築知識が少ない女性の社員でも、顧客からの要請に応じられるよう電話対応マニュアルと、被害状況の聞き取りチェックシートを整備。これらも台風用に用意していたものを応用した。
チェックシートでは、対応の優先度が可視化できるよう、被害状況をSは(築19年以上の瓦被害でひどいもの)、A(ライフライン、防犯上の問題が出ているもの)、B(その他の急ぎのもの)、C(生活に支障がない程度の被害)、その他(点検希望のみ)とレベル分けした。「ドクターのトリアージ(治療の優先度を決定して選別を行うこと)と同じ感覚です」と小山社長は語る。
余震や雨の中、一部の顧客からは直ぐにブルーシートをかけてほしいといった要請も寄せられたが、社長自らも顧客に納得してもらえるよう電話応対にあたった。「社員の命はお金には代えられない。危険な目にあわせるわけにはいきません」(小山社長)。

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