「リスク対策.com」VOL.56 2016年7月掲載記事

写真を拡大  本震後の社内の状況。 金具で壁に止めていた棚も倒れた(写真提供:新産住拓)
「兄が東日本大震災を経験した工務店から、被災地でどのようなことが発生したか、工務店がどんなことに困ったかを詳細に聞き取り、教えてくれたことで次に何をすべきかを判断しやすくなった」と語るのは新産住拓代表取締役社長の小山英文氏だ。台風に備えて災害対応には常に備えてきたが、想定していなかった今回の熊本地震に対しても、次に起こり得ることを予想し、社員のケア、職人の確保、外部支援の受け入れ先の確保など、先手、先手の対応を取り続けた。


同社では、平成11年の大型台風の被害を教訓に災害対応マニュアルの整備を行い、以来、毎年のように発生する台風のたびに内容を見直してきた。「お客様の被害をいち早く支援することが我々の使命。そのことを全社員が理解している」と小山社長は語る。

写真を拡大 小山英文社長(右)と災害対策副本部長として社長を支えた植松豊(左) 同社は顧客のために常に開拓していく会社理念から社名を「住拓」としている

社員・パートで120人程の中小企業だが顧客は5000軒にのぼる。台風では、これまでに最も多くの被害が出たのが平成11年台風18号で約1000軒だったが、今回ははるかに上回る約3000軒の修理・安全点検の要請に対応することになった。

前震が起きた翌早朝、小山社長は台風用に整備していた風水害対応マニュアルを地震用に作り替えることを指示。特にブルーシートがけに関しては台風被害の対応手順と大きく変わるため、「余震が収まるまで屋根に上らない」など、社員の安全確保を最優先することを呼び掛けたという。

さらに、建築知識が少ない女性の社員でも、顧客からの要請に応じられるよう電話対応マニュアルと、被害状況の聞き取りチェックシートを整備。これらも台風用に用意していたものを応用した。

チェックシートでは、対応の優先度が可視化できるよう、被害状況をSは(築19年以上の瓦被害でひどいもの)、A(ライフライン、防犯上の問題が出ているもの)、B(その他の急ぎのもの)、C(生活に支障がない程度の被害)、その他(点検希望のみ)とレベル分けした。「ドクターのトリアージ(治療の優先度を決定して選別を行うこと)と同じ感覚です」と小山社長は語る。

余震や雨の中、一部の顧客からは直ぐにブルーシートをかけてほしいといった要請も寄せられたが、社長自らも顧客に納得してもらえるよう電話応対にあたった。「社員の命はお金には代えられない。危険な目にあわせるわけにはいきません」(小山社長)。

朝のミーティングで は、マニュアルの注意点などを周知徹底した(写真提供:新産住拓)