2016/06/16
C+Bousai vol3
県境を越えて防災と地域活性化
町をつないだ1枚の地図
加賀吉崎、越前吉崎の両方が納得し、具体的な取り組みを開始しようとした矢先、新しい問題が発生した。県境をまたぐ正確な地図がないのだ。
澤田氏は、「どちらの町にお願いしても、自分の町の地図しか出てこない。町を一歩離れると、構造物が記載されていない曖昧な地図しか持っていなかった」と話す。澤田氏は国土地理院が出している基盤地図情報をもとに、これまであいまいだった双方の地図を重ね合わせ、1枚の地図を作成した。建築・環境デザイン学科で教えているため、地図の作成は得意分野だったという。竹本氏も「行政が用意する地図では役に立たなかった。澤田先生が地図を作ってくれなかったら、今回の話は難しかった」と話す。
2015年3月には、双方集まって澤田氏が作成した地図を利用したDIG(災害図上訓練)を開催した。吉崎地区の3分の2は福井県に属するため、図上訓練を始めてみると福井県側から「福井地震の時はここが倒れた」「福井県吉崎町史には被害状況が罹れている」「ここは地盤が悪い」など活発な意見が出されたという。議論の末、県境を超えたハザードマップが完成したが、「まだまだ取り組みは始まったばかり。今年中に、このハザードマップを生かした合同避難訓練を実現したい」(竹本氏)。
「県境の館」開設。防災とともに地域の活性化を
今年4月、県境をまたいだ施設「県境の館」が石川県加賀市、福井県あわら市の出資によって開設した。福井県の吉崎御坊から歩いて3分ほどの立地で、入り口には県境がひと目で分かるデザインを施し、目の前には石川県の国指定天然記念物の鹿島の森が広がる。館内では両県の観光案内を提供するほか、越前加賀の一向一揆や吉崎御坊の歴史、周辺に生息する生き物などを紹介している。石川県側で吉崎町区長会長を務めて防災にも尽力し、「県境の館」の会館にも携わった桶田和芳氏は、「県が違っても吉崎はもともと1つの町で、津波対策に県境はない。県境の館を活用してこれまで以上にお互いが連携することで、防災や経済活性化につなげていきたい」と話している。今後は、県境をまたいだ綱引き大会なども予定されている。
(了)
C+Bousai vol3の他の記事
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/02/17
-
-
-
-
-
今年の夏は大規模停電のリスク大?
今年の夏、東京電力管内を中心に電力不足が懸念されています。需要に対する供給力の余裕を示す「予備率」が1パーセントを切る見通しで、もしそこで突発的な発電所の事故や故障が起きれば予備率はさらに低下、マイナスに陥りかねません。大規模停電のリスクについて、東京電機大学名誉教授の加藤政一氏に聞きました。
2026/02/12
-
-
-
海外危機管理マニュアルの作成が急務
海外に社員を送り出す企業にとって、緊急事態が発生した際の対応体制は必須。どんなに現地に慣れたベテランでも、自分の身を守り切れない事態は起き得ます。ましてや現在は安全保障上の国家対立が深まり、東アジアの緊張も高まっている時代。海外危機管理サービスを手がける安全サポートの有坂錬成代表取締役に、海外進出企業が取り組むべき対策を聞きました。
2026/02/05










※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方