2019/07/25
防災・危機管理ニュース
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/1/7/670m/img_17212e64feaca072555456427ec8b33a259406.jpg)
トーマツは25日、海外リスクに関する記者勉強会を東京都千代田区の同社で開催。パートナーの中澤可武(かむ)氏がフィリピンでの地震から考える日系企業の海外拠点でのBCP(事業継続計画)のあり方などについて解説した。
4月22日にフィリピン・ルソン島を震源とするマグニチュード6.1の地震が発生。同島中部のパンパンガ州では少なくとも8人が死亡。首都マニラでも揺れがあり、オフィス街では避難する人も発生したという。
中澤氏は気候変動の影響もあり世界的に災害が頻発する中、「安否確認や避難計画などBCPが日系企業の海外拠点ではあまり進んでいない」と説明。日本における企業BCPの取り組みは比較的進んでいるものの、水平展開できず現地任せになっている、海外でBCPに精通した人物が採用できないといった課題があるという。
備えもなく災害に遭うと従業員が出勤できず、生産や販売ができない他に生産設備の破損、さらには自社のみでなくサプライヤーの被災による影響を受ける可能性もある。中澤氏は各拠点での安否確認や避難計画の仕組み作り、訓練の実施の他、生産設備などの保全の対策や保険の準備、サプライチェーン脆弱性とサプライヤーBCPの評価や、万が一の際の代替部材・サービス確保に努めるべきだとした。
さらに中澤氏は「日本の本社が責任を持って、海外拠点のBCPに積極的に取り組むよう舵を切る必要がある」と説明。日本の本社で状況を把握し、対策についても現地拠点と協力しながら進めていくことが重要だとした。
同じく東南アジアのインドネシアでは首都をジャカルタからジャワ島外に移転することを決定。ジャカルタ首都圏に約3000万人が住み過密となり、交通渋滞による損失が年間100兆ルピア(約7700億円)にものぼることなどが要因。中澤氏はジャカルタからの人口流出による売り上げ低下や、サプライヤーの移転によるサプライチェーンの再構築の必要性といった企業リスクを紹介。自社拠点を移転する、もしくはしない場合の影響も含めた、今後のリスク分析が必要だとした。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方