「非常時にしか使わないので、緊急対策本部のメンバーの誰にとっても見やすく、緊急時の慌しいなかでも使いやすい情報共有ツールを探していました」

同金庫総務部の八木橋聡氏

当初策定したBCPは強毒性新型インフルエンザを想定していたが、2010年からは首都直下地震と重大なシステム障害を想定に加え、この3つを体系的に整備してきた。信金中金では東日本大震災が起きる前からバックアップ体制の構築にも取り組み、2013年9月に完了した。大きな被害で都内にある本店などが機能不全に陥ると、大阪支店が重要業務を担う体制に即座に切り替わる。

信金中金では内閣府の被災想定見直しに合わせ、これまでは2日だった電力の途絶を2週間に、通信回線の途絶も1週間から2週間にするなど東京地区のすべての拠点が2週間の全面使用不可になる、より厳しい地震被害を設定し対策強化を進めた。当初のメインシナリオであった「平日被災」のケースでは役員や部長、次長など50人ほどの緊急対策本部のメンバーは問題なく参集でき、各拠点には衛星電話やMCA無線を備えているため情報収集や対策の協議も可能であった。しかし、休日・夜間に大地震が起きると連絡手段は一部のメンバーに配布されているPHSに限られた。

災害が発生したときの情報収集や関係機関への報告などの担当者は決まっているが、電話だとどうしても1対1の通話しか確保できず、緊急対策本部のメンバー内でも情報伝達が滞る。また、参集そのものが事故や怪我のリスクを増やす。より効率的で強固な情報通信体制の構築を考えていたときにBousaizに出会ったという。

「非常時にしか使わないので、緊急対策本部のメンバーの誰にとっても見やすく、緊急時の慌しいなかでも使いやすい情報共有ツールを探していました」と総務部の八木橋聡氏は語る。

信金中金が求めていたのは、東日本大震災で復旧の早かったインターネットを利用し、パソコンやスマホ、タブレットなどさまざまな端末で操作でき、いつでも誰もがどこからでも使えるシステム。さらに、一般的な安否確認のようにYES/NOの二択ではなく、まとまった文字が入力できるものだった。スマートフォンが普及し、年齢を問わず画面への入力などの操作に慣れた時代になったこともシステム導入の後押しになったという。

信金中金では多数の情報共有システムを調べ3社に絞込んだうえで、機能と価格などを比較してBousaizの採用を決めた。シンプルで直感的に理解でき、誰にでも簡単に利用できるシステムでありながら、セキュリティが確保され、さらにコストまで考慮すると結果的にBousaizの1択しか残らなかったという。鈴木氏は「無料でトライアル版を試せたのがよかった。関係者で使ってみると、操作感がよく使いやすいシステムと好感触を得ていました。ですから採用はスムーズに決まりました」と語る。

発災時の行動は以下のような流れだ。例えば、大地震が起こると緊急対策本部のメンバーにだけメールが配信されログインする。各部門は事前に決められた業務フローに沿って施設やインフラの被害調査、システムの稼働状況の把握、営業店の状況確認、関係機関への報告など担当業務を開始し、情報が収集された段階でBousaizの災害掲示板に報告する。

ここで重要なのは文字で情報を集約し、記録を残す点だ。「危機発生時は、時系列で文字情報を常に確認でき、全メンバーが同じ情報を同じタイミングで共有できる体制が重要」と鈴木氏は力説する。なぜなら、東日本大震災のときに伝達のプロセスで情報が変化した経験を持つからだ。緊急時は不確かな情報が広がり混乱をまねく可能性があるので、刻々と変化する被害情報の集約をしつつ、時系列に時間をさかのぼって正確な情報を確認することが不可欠なのだ。

掲示版への写真のアップロードも簡単で効率的な運用を手助けしてくれる。「例えば建物などの被災情報の写真をアップしてしまえば、視覚的に状況を正しく把握でき、情報のタイムラグを簡単に防ぐことができます」と鈴木氏は評価する。

Bousaiz画面イメージ