2019/09/05
ロックフェラー財団100RCに見る街づくりのポイント
①グラスゴー市民のエンパワーメント
行政サービスへ誰もがアクセスできるようにする、地域コミュニティーのリーダーを育成する、誰もが安心して集まることができる安全な場所を確保する――の3つの活動により、市民のエンパワーメントを高める構想です。グラスゴーでは、人口の7人に1人が民族マイノリティー出身という多様性があります。それゆえに全ての住民が、出身地に関係なく教育やコミュニティーのサポートを受ける機会を創出することを目指しています。市やNGOなどと協働してコミュニティーリーダーを育て、健康で安全な毎日のためのスペースを積極的に創ります。そこで市民のつながりが醸成されることを期待しているのです。
②廃棄地の有効活用
現在廃棄地となっている土地や街のインフラ整備を通して新たな経済価値を創出することを目指しています。試算によると、土地活用により10億ポンドの新たな価値が創出されるといわれています。特に低炭素社会を実現するため、空気汚染を解消するための方策や、交通システムの整備によるアクセシビリティの向上に力を入れています。
③健全な経済成長への支援
人口の増加に伴って、収入格差が生まれています。グラスゴーでは特に若者の雇用の後押しに力を入れており、新たな技術や知識の習得のための訓練の機会を提供しています。デジタルテクノロジーの向上に向けた取り組みにも力を入れています。さらに、共有財産の位置情報を事業者と共有しながら、市内のアセットから新しいビジネスを生み出すことを目指しています。
④市民参加の強化
「レジリエンス」とは何かについての考え方を、市民に理解してもらうことに注力しています。特に市民と市役所、市民同士の「信頼」の醸成に力を入れています。
これらの長期的観点に基づいて、15つのゴールと49のアクションを設定しました。
低炭素社会に向けたエネルギーマネジメントとソーシャルインクルージョン
グラスゴーはスコットランド最大の都市ではありますが、歴史も古く、昔ながらの美しい建造物と新しいビジネス地区がうまく融合しています。街には建物の高さ制限があるため高層ビルは存在しません。今最も力を入れているのが、低炭素化、再生可能エネルギーの活用です。市役所が管理する街のインフラ(街灯など)の電力を、徐々に再生可能エネルギーにシフトしています。新しいビル群を建築しにくい制約がありますが、人々の生活はデジタル化しています。日々の生活を支えるためのエネルギーマネジメントに積極的に乗り出している点が印象的な事例だと思います。
さらには、レジリエント戦略の柱にも掲げられている通り、多様なバックグラウンドを持った住民が特に若年層で増加しているため、既存の住民との一体感の醸成に力を入れています。日本も外国人居住者は増加の傾向にあります。Resilient Cityを考える上でとても重要なポイントだと思います。

(了)
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