2016/12/14
リオ五輪から学ぶ 日本の危機管理を高めるヒント
特集 1 視察記 ①
2.リスクマネジメント事務局と現場の乖離
これは日本に限ったことではなく、ロンドンやリオでも苦労されていた点と感じており、リスクマネジメントの実践において悩ましいポイントです。
何らかのリスクが顕在化した時に対応するのは現場です。看過できないリスクであれば、日々改善活動など対応を実施します。こうしたことは現場では当たり前です。優先度の高い対応はリスクアセスメントとは関係なく進みます。
かくして、リスクアセスメントを管理する事務局と現場はそれぞれの作業を無連携に進めてしまい、信頼感を損なってしまうことになりかねません。こうしたことのないよう注意したいものです。
3.シナリオ読み合わせ型の訓練
上記2つのような課題を解消する有効な解決策が訓練や演習です。少し細かく示すと、①対応策の検証を目的にしたテスト、②対応策の習熟を目的にした訓練、③想定外の事態への対応能力向上を目指す演習、など目的別に、どの範囲(組織、機能、参加者、拠点など)をどんな手段(机上、実働など)、シナリオで行うのか整理して実施すべきです。
ロンドンでは、合同で演習を行い対応の改善に役立てるような演習が多く実施されていました。一方、日本では、限られた参加者により、事前に決められたシナリオの読み合わせ型の訓練が何度も行われる傾向があります。これらは、各組織間で事前に擦り合わせが行われ、一定の対応の習熟という点では大変有効ですが、最初からうまくいくことが前提となってしまうことが多く、変化の激しい事態への対応能力向上についてもさらに取り組んでいく必要があると思います。
自助、共助、公助の精神
最後に、五輪開催においては、安全と経済的な効果の両立が当然目指されるべきです。そのためにも、大会運営にあたる関連組織だけの責任ではなく「自助、共助、公助」の精神が適切に発揮され、国、自治体、企業、市民などが連携して危機管理に対応していくことが望ましいと思います。
例えば、大会開催期間中の人の移動や物流一つ考えても、事前にわかっている日時に、どのルートでどんな混乱が予想され、どんな協力をすればよいのか、また、そんな中、自然災害が起きても、安全第一に、経済の悪影響をできる限り避けるためには何ができるのかを、あらかじめしっかり考えておくべきです。起きてから考えても間に合いません、起きた後に誰の責任か追及しても取り返しはつきません。国、都や組織委員会が頑張ればすべてできるわけではないのです。
「自助、共助、公助」で備える時間はまだ4年ありますが、既に4年を切ったわけで、これからオールジャパンで日本の真価が発揮されていくことを願っております。
(了)
リオ五輪から学ぶ 日本の危機管理を高めるヒントの他の記事
- 特集 1 テロ対策チェックリストテロ対策の保安アドバイス
- 特集 1 特別寄稿ITセキュリティについての考察
- 特集 1 特別寄稿大会警備を振り返る
- 特集 1 視察記 ②東京大会はリオの数倍の攻撃が起きる
- 特集 1 視察記 ①シナリオ絞り組織一体で効果的な訓練を
おすすめ記事
-
-
-
-
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/25
-
目指すゴールは防災デフォルトの社会
人口減少や少子高齢化で自治体の防災力が減衰、これを補うノウハウや技術に注目が集まっています。が、ソリューションこそ豊富になるも、実装は遅々として進みません。この課題に向き合うべく、NTT 東日本は今年4月、新たに「防災研究所」を設置しました。目指すゴールは防災を標準化した社会です。
2025/11/21
-
サプライチェーン強化による代替戦略への挑戦
包装機材や関連システム機器、プラントなどの製造・販売を手掛けるPACRAFT 株式会社(本社:東京、主要工場:山口県岩国市)は、代替生産などの手法により、災害などの有事の際にも主要事業を継続できる体制を構築している。同社が開発・製造するほとんどの製品はオーダーメイド。同一製品を大量生産する工場とは違い、職人が部品を一から組み立てるという同社事業の特徴を生かし、工場が被災した際には、協力会社に生産を一部移すほか、必要な従業員を代替生産拠点に移して、製造を続けられる体制を構築している。
2025/11/20
-
企業存続のための経済安全保障
世界情勢の変動や地政学リスクの上昇を受け、企業の経済安全保障への関心が急速に高まっている。グローバルな環境での競争優位性を確保するため、重要技術やサプライチェーンの管理が企業存続の鍵となる。各社でリスクマネジメント強化や体制整備が進むが、取り組みは緒に就いたばかり。日本企業はどのように経済安全保障にアプローチすればいいのか。日本企業で初めて、三菱電機に設置された専門部署である経済安全保障統括室の室長を経験し、現在は、電通総研経済安全保障研究センターで副センター長を務める伊藤隆氏に聞いた。
2025/11/17
-







※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方