2019/12/20
ロックフェラー財団100RCに見る街づくりのポイント
レジリエント戦略4つのビジョンと10のイニシアティブ
世界の他都市のレジリエント戦略と同じように、富山市でもレジリエント戦略の大きなビジョンを掲げています。それに加えて、各ビジョンにまたがる形で展開される10つのイニシアティブを定めています。
【4つのビジョン】
住民
ここでいう住民とは、基本的には全ての世代を念頭においていますが、特に高齢者が健康で活発に暮らし続けるための方策に重点が置かれています。共助を促す世代間の交流も重視しています。
環境
人間と動物、自然との共存がテーマです。国連環境計画(UNEP)といった国際組織や国内の環境問題の研究センターとコラボレーションしながら、エコフレンドリーかつ循環型の経済・社会システムをつくることを目指しています。
インフラストラクチャー
ここでのインフラストラクチャーは単に橋や道路などの物理的なものを指すのではなく、都市部と農村部のつながりも含まれます。富山市ではこれを社会インフラと呼んでいます。コストを抑えつつ、官民連携による先端技術を取り入れた物理インフラの構築をしながら、都市と農村部の結びつきを強めたいという狙いがあります。
繁栄
現在、市の経済的な富の源泉となっているITや薬品、製造業などの成長を後押ししながらも、新しい技術群―ナノテクノロジーやロボティクス、バイオテクノロジーなど―の誘致に力を入れていきたいとしています。加えて、観光政策にも力を入れることで新たな雇用の創出と、若い世代のエンゲージメントを図ることを目指しています。
4つのビジョンの下には分野横断的な次の10のイニシアティブが定められました。
【10のイニシアティブ】
① スマートシティの推進
② 公共交通の整備
③ 水、ゴミ、エネルギーのマネジメント
④ 災害への備え
⑤ 市の中心部を海岸エリアに集約
⑥ 市内農村部とのつながり強化
⑦ ビジネスへの投資
⑧ 観光政策
⑨ 市民の幸せ、参加、健康の向上
⑩ 環境教育
これらのイニシアティブの元に、各3~5つのアクションプランが定められました。例えば④の災害への備えでは、「指定避難所や公共施設へのアクセスの改善」といった具合です。これらのアクションは、既に富山市で実行されているもの、今後取り組みが始まるものと分かれており、既存の行動計画との融合が図られています。
自助、共助の意識を強くもったレジリエント戦略
富山市のレジリエント戦略の特徴として、自助(self help, self realization, self supportなど)や共助 (community support)のワードが多用されていることがあげられます。両者は共助のための自助として位置づけられて、あくまで自助、あるいは自助の意識をいかに向上させるかに配慮したイニシアティブやアクションプランになっています。他の都市のレジリエント戦略でも地域コミュニティのエンパワーメントは掲げられていましたが、ここまで“自助”を打ち出した都市はなかったのではないかと思います。
市の中心部に主要な公共施設や公共交通を集約させコンパクトシティを進める一方で、中心部から離れた農村部とのつながりも強化していきたいという狙いも持っています。農村部では、電気自動車など環境にやさしい乗り物の導入を進めたり、農業教育を通じて若い世代と農家の交流を促すプランも定めています。都市と農村部の結びつきは、日本のどの地域においても共通の課題となっています。コンパクトシティ化をいち早く進めた富山市がどのようにこの課題に立ち向かうのか注目したいと思います。
(了)
ロックフェラー財団100RCに見る街づくりのポイントの他の記事
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/04/28
-
-
-
サプライチェーン対策「行っていない」が49.7%~BCP策定状況は頭打ち、実効性に課題~
内閣府は、令和7年度における「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」についての結果を発表した。2007年度から隔年で実施しているもので前回の令和5年度時点での調査以来となる。それによると、近年災害時などで課題になっているサプライチェーンの対策について、「サプライチェーン強靭化への取組を行っているか」との設問に対し、「行っていない」が49.7%と最も高く、次いで「行っている」が25.9%、「現在検討中」が20.7%となった。
2026/04/26
-
スマホ通知が号令、災害の初動対応訓練を開発
半導体製造装置大手の株式会社ディスコ(東京都大田区)は、平時のコミュニケーションツールを使ったさまざまな危機事案に対応できる初動対応訓練の仕組みを開発し、実践を続けている。メンバーが、危機を発生させる運営チームと対応チームに分かれ、業務中に突発的に危機事案を模擬的に発生させるとともに、通知を受け取ったチームは、即座に、訓練を開始する。リアリティーを追求した結果、たどり着いた手法だ。
2026/04/20
-
-
-
-







※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方