大きく遅れを取る日本の企業保険活用

日本の損害保険の市場規模は世界147カ国中でアメリカ、中国、ドイツに次いで第4位です。しかしながら、GDPに対する割合でみると2.37%で23位となり、世界平均の2.81%さえ下回っています。

企業保険と個人保険の区分別統計データがないので、企業保険だけの実態は不明ですが、日本の損害保険市場の60%以上が自動車保険(自賠責を含む)であることから類推すると、個人保険の依存度が大きいと思われます。おそらく、企業保険だけの統計があれば対GDP割合はもっとずっと下位になることでしょう。

言い換えれば、日本の企業が支出している損害保険料が海外の企業と比べ相対的に低いということになります。

日本企業がリスクマネジメントに関し、海外企業に大きく遅れを取っているのは、支払っている保険料の額だけではありません。残念ながら、企業保険の活用方法やその中身についても同様です。企業保険におけるグローバルスタンダードと日本標準は月とスッポンほどの開きがあります。

株式保有の関係や昔からの付き合いといった理由だけで保険会社を選択して、補償内容が自社のニーズに合致しているかどうかを深く検証せずに、保険契約をしている企業がまだ多数派なのです。

「水と安全はただ。」と言われてきたように、日本人は比較的リスクに対して鈍感であり、リスク対策のひとつとしての保険に無頓着という傾向があると言えるでしょう。

“日本村”特有の無駄な保険

日本国内だけでビジネスを展開している企業であれば、この “日本村”特有の考え方も通用するかもしれませんが、グローバル企業の場合には問題です。

グローバルでビジネス展開をしている企業は、本業のビジネスでは海外の競合他社と同じ土俵で戦っているはずです。ところが、ビジネスのどこにどのようなリスクが有るのかを十分把握せず、すなわち「己を知る」ことのないまま、無駄な保険を手配したり、必要な保険を手配していなかったりしている状況なのです。

このように、戦う前提であるのに「己を知る」ことなく、安心して戦うための備えとなる保険について、周回遅れの現状に甘んじていていいのでしょうか?リスクマネジメントの実践や、効果的な保険手配を通じて、真の意味で海外の競合他社と戦える企業体質を作ることが、日本の企業にとって必要な時期になっているのです。

これから12回にわたり拙著「国際企業保険入門」(中央経済社)の概要を解説する形で日本企業と欧米のグローバル企業のリスクと保険活用の考え方の違いや、欧米企業では当たり前に加入しているものの日本企業ではあまり浸透していない保険について案内していきます。

第1回は企業経営とリスクについて説明します。