しかし、ここで強調しなければならないことがある。それは人間一人では何もできないということだ。特に災害時においては家族、近隣住民、自治体、企業の単位でチームとなり一丸となって対応しなければ困難を乗り越えることはできない。チームプレーの総力戦で命をつなげなければならないのである。そのためには、緊急時の対応方法を標準化し、多くの人々が共通の認識として捉え、運用していくことが必要である。

本シリーズでは、一般市民、そして組織の従業員一人ひとりの生活に密着したところから学びを浸透させていき、ファーストレスポンダー(※)としてポジティブな防災を実現できるように導いて行きたい。リスク対策.comの読者の皆さんに災害に対応した機動力について何らかのヒントを提供できれば深甚である。

※ファーストレスポンダーとは事故や災害が発生した時に初動対応に当たる公設の警察・消防・自衛隊・海保の職員を総称している呼び名である。

以降、下記の連載予定で進めて行きたい。

《連載予定項目》
1.災害準備編:

 災害時の特徴を学び、真に準備しなければならない事は何かを理解する、特に自己の安全管理の重要性を理解する。

Ⅰ.危険の種類を認識
Ⅱ.地域、健康、人、インフラへの影響を分析
Ⅲ.防護行動
Ⅳ.災害準備の計画
Ⅴ.訓練参加の重要性

2.災害心理学編:
災害時に人間が陥り易い傾向とパターンを心理学的に解析し、それらを克服するための理論と、チームを守る上で心構えを学ぶ。

Ⅰ.災害時における人間が陥りやすいバイアス
Ⅱ.要救助者、救助者双方の災害時におけるストレス
Ⅲ.災害時のストレスを軽減する方法
IV.チームとしての心構え

3.チーム編成編:
災害時にいかに効率よくチームを機動させ情報共有しながら対応していくかの基本的な学び。(インシデント・コマン・ドシステム)

I.ICSとは?
II.チームワークの重要性
III.記録のための書式

4.個人用保護具(PPE)編
災害対応する上で、いかにPPEが重要であるかを理解する。

I.個人用保護具の種類
II.安全管理
III.個人用保護具の正しい装着及び脱着

5.火災防護編:
安全な初期消火を実践するための学び。

Ⅰ.火の化学を理解する
Ⅱ.自宅、職場、近隣での火災危険
Ⅲ.状況判断
Ⅳ.可燃性危険物
Ⅴ.消火方法
Ⅵ.安全管理

6.災害ファーストエイド編:
 平時のファーストエイドと違う災害時特有の応急手当を実践するための学び。

Ⅰ.災害時特有のファーストエイド
Ⅱ.4人の“殺し屋”
Ⅲ.気道確保、止血、ショック、クラッシュ症候群への処置
Ⅳ.要救助者の処置に対する優先順位
Ⅴ.衛生管理
Ⅵ.要救助者のアセスメント
Ⅶ.応急救護所の設置
VIII.その他のファーストエイド

7.捜索・救助編:
危険が伴う捜索救助活動における、より安全で確実な捜索救助を実践するための学び。

Ⅰ.短時間で多くの要救助者を救出
Ⅱ.状況判断
Ⅲ.基本的な救助技術
Ⅳ.基本的な捜索技術
Ⅴ.瓦礫を取り除く方法
Ⅵ.要救助者を安全に救出する方法
Ⅶ.救助者の安全管理

8.危険物・テロ災害編:
化学薬品、生物剤、放射性物質、爆発物などを用いた特殊災害を見極め、それに対する正しい対処を実践するための学び。

Ⅰ.テロの定義を理解
Ⅱ.ターゲットになりやすい場所を理解
Ⅲ.テロ事案に対応する方法
IV.危険物・テロ災害初動対応ガイドブック

9.国民総ファーストレスポンダー化への提言

10.国土強靭化への提言

(了)