2020/04/20
インタビュー
世界経済フォーラムが今年1月に発表した「第15回グローバルリスク報告書2020年版」は政治、経済、学術など各界のトップリーダー750人以上に行ったアンケート調査の結果を反映、今後10年間に世界で起こり得るリスクを可能性と影響度で評価している。毎年1月に開催される世界経済フォーラム年次総会(通称:ダボス会議)の討論に活用されるほか、各国の政府や企業の長期戦略策定にも影響を与えるとされている。

■長期リスクの上位5を環境問題が独占
各界のリーダーが回答した「今後10年間に発生する可能性が高いリスク」は、調査を開始してから初めて、上位5項目を環境関連が占めた。
(1)異常気象(洪水・暴風など)
(2)気候変動の緩和や適応の失敗
(3)自然災害(地震・津波・火山爆発・地磁気嵐など)
(4)生物多様性の喪失と生態系の崩壊
(5)人為的な環境災害
また今後10年間に発生した場合の影響が大きいリスクについても、上位5項目のうち3項目が環境リスク。また5位の水危機も、社会的要因がからむものの、環境リスクに近い。
(1)気候変動の緩和や適応の失敗
(2)大量破壊兵器
(3)生物多様性の喪失と生態系の崩壊
(4)異常気象(洪水・暴風など)
(5)水危機
報告書の編集に携わるマーシュ・アンド・マクレナン・カンパニーズのグループ会社で保険仲立人大手のマーシュ ブローカー ジャパン取締役会長の平賀暁氏は、2020年版の特徴を「今後10年間の環境リスクは世界経済にとって相当厳しいことが読み取れる」と説明。ただしそれは単体のリスクではなく、他のリスクと相互に連関し合っていると強調する。
最たるものが地政学的リスクで「大国間の対立や自国主義、それによる多国間協調の後退が環境リスクの引き金となっている、あるいは増大させているという視点を欠いてはならない」と指摘。そしてこのことが、気候変動をはじめさまざまなグローバルリスクへの対応を阻害していると説く。
「気候変動への適応の失敗は明らかに人為的要因。生物多様性の喪失にしても自然災害の多発にしても、背後には人為的要因が見え隠れし、根底には国家間の駆け引きといったガバナンスの問題が横たわっている。それがリスクの起点をあいまいにし、解決の糸口を見つけにくくしている」
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