■若年層リーダーはトップに苛立ち

一方、2020年に増大すると考えられる短期的リスクについて、世界のトップリーダーは上位に下記のリスクをあげた。

(1)経済対立
(2)国内政治の二極化
(3)異常熱波
(4)自然資源の生態系の崩壊
(5)サイバー攻撃:インフラ分野

平賀氏によると、これらはいずれも経済リスクに直結するもの。「ビジネスリーダーが最も気にするのは自社の資産構成や財務指標。そのため財政危機や失業、エネルギー価格の急変動などにつながるリスクに関心が向くのはやむを得ない。結果として、経済関係のリスクが多くなっている」と説明する。

ただしこれらのリスクをひも解けば、最終的には環境リスクにつながると示唆。「短期的な経済リスクの解決を求めるのであれば、結局はそれを呼び込んでいる根底のリスク、すなわち環境リスクに真摯に立ち向かわざるを得ない。そしてそのためには地政学的対立をやめ、多国間協調を図ることが不可欠となってくる」

実際、1980年以降に生まれた若年層のリーダーは、長期・短期のいずれの展望においても環境リスクを高く位置付けた。90%近くが「異常熱波」「生物多様性の喪失」「汚染による健康被害」を、2020年さらに悪化するリスクにあげている。「将来を強く憂慮する彼らは、いまのビジネスリーダーは手ぬるいと考えている。直近の経済リスクでなく、環境リスクに速度を上げて対応すべきというメッセージが読み取れる」と平賀氏は説く。

今年の世界経済フォーラムの主テーマは、ステークホルダーがつくる持続可能で結束した世界。「利害関係者のすべてが語り合い、一致団結できるかが、環境リスクと地政学的リスクを同時に鎮静化させるカギ。今年の報告書には、このことがまんべんなく反映されている」と話す。

■グローバルリスク報告書2020年版
https://www.marsh-mbj.com/ja/insights/research/global-risks-report-2020.html