2025/05/27
インタビュー
事業継続は戦略部門化している

リスク対策.comはこのほど、セキュリティとインテリジェンス に強みをもつコンサルティング会社「コントロール・リスクス」(本部英国)で、北米・中南米地域を統括する最高経営責任者(CEO)ビル・ユーデル氏に対し、単独インタビューを行った。5月20日に都内で開かれた同社セミナー後に実施したもので、ユーデル氏は「グローバル企業の多くが、地政学分析チームを新設し、より戦略的に事業継続を検討し始めている。これは以前には見られない動きだ」と強調した。同氏はコントロール・リスクス入社以前、中央情報局(CIA)で情報分析官と作戦担当官を兼任した経歴を持つ。
Q.トランプ大統領は、FEMA(連邦緊急事態管理庁)の解体の可能性にも言及したと報じられています。自然災害リスクの一層の高まりも懸念される中で、アメリカ企業は現在、どのようなリスクを最も懸念しているのでしょうか。
自然災害に関しては、公的支援が縮小するのではないかという懸念が顕著です。FEMA が機能しなくなった場合、復旧資金や人員を誰が手当てするのか――これが企業にとって最大の不安要因になっていると考えられます。特にハリケーン常襲地帯(ルイジアナ州・フロリダ州など)の企業は、自前で備蓄や代替拠点を強化し、ハリケーン・シーズン(8~10月)の進路と連邦政府の対応の両方を日々モニタリングしています。
一方、この構図はサイバー脅威にも通じます。脅威の種類が自然災害かサイバー攻撃かを問わず、政府の支援が期待しづらいため、企業は増大するリスクと現状の板挟み状態になっていて、個別対応をせざるを得なくなっていると言えます。
Q. 自然災害リスクが高まる一方で、地政学リスクの高まりは限定的になってはいないのでしょうか? 実際、企業はどう見ていますか。
地政学リスクは トランプ政権発足前から高止まりしており、むしろ関税引き上げや同盟関係の再定義によってさらに上昇傾向にあります。
とりわけ、対中関係では 追加関税が相次ぎ、サプライチェーン再編が避けられません。また、USAID の大幅縮小や国際機関(NATO、IMF など)への拠出見直しにより、米国の「ソフトパワー」が弱体化しつつあるとの見方がビジネス界に広がっています。
インタビューの他の記事
- 「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
- 事業継続は戦略部門化しているインタビュー:コントロール・リスクス北米・中南米地域 CEOビル・ユーデル氏
- 気候変動適応がBCPにもたらすロングスパンの経営観
- 「まさかうちが狙われるとは」経営者の本音に向き合う
- 企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方