コントロール・リスクス アメリカ地域 最高経営責任者 ビル・ユーデル氏

リスク対策.comはこのほど、セキュリティとインテリジェンス に強みをもつコンサルティング会社「コントロール・リスクス」(本部英国)で、北米・中南米地域を統括する最高経営責任者(CEO)ビル・ユーデル氏に対し、単独インタビューを行った。5月20日に都内で開かれた同社セミナー後に実施したもので、ユーデル氏は「グローバル企業の多くが、地政学分析チームを新設し、より戦略的に事業継続を検討し始めている。これは以前には見られない動きだ」と強調した。同氏はコントロール・リスクス入社以前、中央情報局(CIA)で情報分析官と作戦担当官を兼任した経歴を持つ。

 

Q.トランプ大統領は、FEMA(連邦緊急事態管理庁)の解体の可能性にも言及したと報じられています。自然災害リスクの一層の高まりも懸念される中で、アメリカ企業は現在、どのようなリスクを最も懸念しているのでしょうか。

自然災害に関しては、公的支援が縮小するのではないかという懸念が顕著です。FEMA が機能しなくなった場合、復旧資金や人員を誰が手当てするのか――これが企業にとって最大の不安要因になっていると考えられます。特にハリケーン常襲地帯(ルイジアナ州・フロリダ州など)の企業は、自前で備蓄や代替拠点を強化し、ハリケーン・シーズン(8~10月)の進路と連邦政府の対応の両方を日々モニタリングしています。

一方、この構図はサイバー脅威にも通じます。脅威の種類が自然災害かサイバー攻撃かを問わず、政府の支援が期待しづらいため、企業は増大するリスクと現状の板挟み状態になっていて、個別対応をせざるを得なくなっていると言えます。

Q. 自然災害リスクが高まる一方で、地政学リスクの高まりは限定的になってはいないのでしょうか? 実際、企業はどう見ていますか。

地政学リスクは トランプ政権発足前から高止まりしており、むしろ関税引き上げや同盟関係の再定義によってさらに上昇傾向にあります。

とりわけ、対中関係では 追加関税が相次ぎ、サプライチェーン再編が避けられません。また、USAID の大幅縮小や国際機関(NATO、IMF など)への拠出見直しにより、米国の「ソフトパワー」が弱体化しつつあるとの見方がビジネス界に広がっています。