2. 保険料税

日本ではなじみがありませんが、意外と多くの国で、保険料に対して税金が課されます。保険契約者が海外の企業であっても、その国で保険料を支払う場合にはこれを負担する必要があります。

保険料税は、その税目はさまざまですが、所定の保険に加入した保険契約者が、保険料の支払いに際して納めなければならない税金です。保険料を受け取る保険会社の側ではなく、保険料を支払う保険契約者の側が、税金を支払わなければなりません。日本では保険料には消費税がかかりませんが、保険料にかかる消費税のようなものと理解してください。

具体的な税目としては、保険料税(Insurance Premium Tax)という名称のほか、付加価値税(Value Added Tax)、消費税(Goods & Service Tax)、印紙税(Stump Duty)などがあります。保険料の請求書に保険料と税金の両方が明記される方式が取られている国もありますが、内税方式のように税金が明記されていない国もあるので、保険料税が徴収されていることに気付かない場合があります。

いずれにしろ、保険料税が課される国では、事業会社は保険料税を負担しなければならないのです。前述した付保規制のある国に所在する子会社を日本の保険証券に含めて補償している場合、その国で本来納めなければならない保険料税を納めていないことになります。こういった場合に、気付かないうちに脱税行為をしていることになるので、注意してください。

また、イギリスのように国外の保険会社との保険契約は認めているものの、その場合でも保険料税は支払いなさいという法規制の国もあります。

ただし、少額保険料の場合には課税を免除することになっていますので、その点の確認も必要です。海外付保契約の保険料税発生状況を把握し、追跡課税する手間やコストを考えれば、保険料税が軽微な場合などにはその支払いを免除する方が合理的、という趣旨のようです。これを逆に言うと、軽微でない保険料税については、しっかりと徴税する意向が示されていることであり、保険料税を支払わなかった場合のリスクは、より現実的であり、決して低くないと考えられます。

3. 現地での損害調査の可否

通常、保険金支払いのためには、保険会社の損害調査員が保険事故の内容や、損害額などを実地に査定し評価します。ところが、国外の保険会社との保険契約を認めるものの、国外の保険会社による損害調査業務を禁じている国があります。

例えば、タイは海外からの付保が可能な国ですが、海外からの損害調査ができません。日本企業が日本の保険会社と締結する企業保険の中で、タイの子会社も保険対象にすることが可能ですが、事故が発生した場合、タイ子会社は自ら損害調査会社を雇い、保険金支払いに必要な調査業務や書類作成をしてもらわなければなりません。万が一の事故のために保険を付けているのに、保険金申請に関する手続きを全て現地の子会社が自分自身で行う必要が生じてしまうのです。

このような国の子会社を日本の保険証券で補償するのか? それとも現地でLocal Policyを発行するのか? 各企業の判断になりますが、決定する際には保険契約の重要な要素である損害調査サービスを保険会社から受けられないことを、十分に認識しておく必要があります。