2020/07/03
事例から学ぶ
コロナ禍は避難所の環境を改善する好機
安心して車中避難できる場所を整備
特に車中避難については課題も多い。熊本地震の際は、物資の配送拠点となった町内の県有施設に一時3000 台の車が集中して大混雑。また同年の6月に降った大雨では合計350世帯が床上・床下浸水し、車100台以上が水に浸かった。
町の洪水ハザードマップでは、中央部を横切る木山川、秋津川が氾濫した場合、最大で町域の数分の1が浸水エリアになる。住民の迅速な避難とともに、車の安全な退避が必須。そのため町では、安心して車中避難ができる場所を急ピッチで確保している。
復興に向けて各地区に組織した住民主体の「まちづくり協議会」の提案をもとに整備を進める「避難地」がそれ。指定避難所19カ所のほか、防災倉庫や防災用井戸、ソーラー照明灯などを備えた避難地がこれまでに16カ所。うち10カ所には駐車場区画が整備され、それぞれ10 台~ 30 台を駐車できる。今後もさらに増やす計画だ。
具体的な指示をあらかじめ計画に明記
迅速な初動への第一歩
益城町に招へいされて2年半。今石氏は「『今年はこれをやる』と最初に明言し、自らを追い込んで必死でやってきた」と振り返る。
18 年度は地域防災計画を大幅に見直し、新たに業務継続計画(BCP)と受援計画を策定、19年度には地域防災計画を再改訂し、職員参集時の行動を示す「アクションカード」を作成した。20年度は、冒頭で紹介したとおりだ。
これらによって変革したいことが、避難所のあり方と並んでもう一つ。初動体制がそれで、同じく阪神・淡路大震災から継続する課題だという。改善に必要なのは精神論ではなく、あらかじめの準備。綿密に計画を立て、行動を決めておくことが欠かせない。
「それこそ熊本地震の反省」と、同町危機管理課長の岩本武継氏。「以前の地域防災計画は、大雑把なことしか書いていなかった。その結果『何をやっていいかわからない』という職員が多数出てしまった」と話す。
現在の計画は、例えば水害であれば職員の参集基準を状況に応じて8段階設定。それぞれのレベルでいつまでに何をしなければならないか、担当課ごとに明記した。所属の下には職員の名前も書き込み、責任感を持たせている。
水害レベル1~4は担当課で対応するが、レベル5以降は本部体制に移行。レベル5・6で警戒対策本部、レベル7・8で災害対策本部を設置し、かつレベル8では全職員に参集をかける。このときはすでに大規模な浸水被害が想定される状況だ。
目標とするのは、対策本部の招集から1時間以内に本部会議を開くこと。すなわち、1時間で国・県、警察、消防など関係機関への連絡、可能な限りの情報収集と状況把握、資料の用意、会場の設営を済ませなければならない。
「課長以上は現場に出る時間はない。ということは、一般職員に動いてもらう以外にない」。そこでものをいうのが、アクションカードだ。
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