2020/08/04
2020年8月号 豪雨対応
コロナと共存する「転禍為福のBCP」とは?
需要と供給の同時インパクト
次に製造業のサプライチェーンへの影響だが、供給途絶だけでなく需要も同時に冷え込んだため、いつ、どのように復旧したらいいか段取りが組めない状況のように推察される。この需要と供給への同時インパクトは、世界各地で同時並行かつ時差があり、サプライチェーンの双方向、川上から川下、川中も含めて連鎖的、断続的な途絶が発生している。
多くの製造業、特に自動車メーカーは操業を再開し始めているが、その車が売れるかどうかまで分からない。縮退・停止の判断が遅れた分、調達先企業、サプライヤーの方で不要な在庫が積み上がっている状況も見られる。
製造業のサプライチェーンは自動車産業を筆頭に非常に裾野が広く、相互依存性がある。平常時は役割分担で効率的に分業できていても、何かがあるとその効率性があだとなって全部が連鎖的に止まる。もともと経営体質が脆弱だったサプライチェーン構成企業が倒産したり、調達困難、納入キャンセルといったことも発生している。また、従業員の参集率が低下し、オペレーションができず、出荷が止まってしまうといった事態も散見された。
基幹産業が抱えるグローバルな課題としては、需要が低迷し回復見込みがなかなか立たない中、雇用や資金繰りを維持しながら、アフターコロナあるいはウィズコロナへの対応において何をすればいいかということが挙げられる。消費者や法人の顧客が従来のように製品を買ってくれるか分からない中で、経済、雇用の維持の観点から生産を再開せよという圧力も強まっている。
調達先やサプライヤーがどういう状態かは、把握しにくい。その把握しにくさが曖昧さを生み、曖昧さが憶測を呼んで、サプライチェーンの中で竦(すく)みのようなものが発生している。
在庫は積めるが、本当に売れるか結果が出るのは先。従業員は自宅待機させたいが、自宅待機が続くと売上が上がらず会社として存続できない。在宅勤務も進んでいるが、スプリットオペレーションと在宅勤務だけでは生産効率は落ちる。出社したとしても感染防止対策は打たなければならず、特に製造業の場合は生産ラインで人の配置を組み替えなければならずかなり生産効率が落ちてしまう。
操業の一部・全部停止に伴い、給料、手当ての支払いが難しく、人員整理に直面、さらにはキャッシュフローが明らかに不足し、ショートしている企業も出ていると聞く。従業員の健康、命を守ることと、会社の存続、このジレンマ、バランスを取ることは大変難しい。
日本政府は、特に中国に集中していたオペレーションに対して日本回帰や東南アジアへの分散を支援するということだが、日本に全部戻すと人件費の問題がクリアできたとしても自然災害リスクが懸念され、企業はそう簡単に判断できない。東南アジア諸国に分散させるという選択肢にしても、短期的にはそれでいいかもしれないが、中長期で考えれば そう簡単ではない。正解がない中で、グローバルに展開しているメーカーは悩んでいる。
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