2020/08/04
2020年8月号 豪雨対応
コロナと共存する「転禍為福のBCP」とは?
これから求められる対策
COVID-19 という新型感染症のリスクは定常リスクとなる。終息や根絶はなく、共存していくことが求められる。通常時から感染症対策をある程度しなければいけない。経営資源の中でも、特に人に着目し、バイオテロの手段としての可能性も生じているので、それに対しての想定もしなければいけない。
今後のレジリエンス強化に向けて、ポストコロナの見極めという意味では動的なスタンバイ状態をとることが必要。今の危機状態がどのレベルなのか、政府が緊急事態宣言を出したからではなく、わが社にとって、顧客にとってどういう状態なのかを見ながら、危機対応レベルを変化(へんげ)していく。危機対応の転換点を見逃さないこと。エクスポージャー管理を含め、市場の環境変化に適応し、進化していくことを危機管理体制の中でやらなければいけない。
従業員に関しては、3K に「怖い」を加えて4K になる。怖さを軽減して働けるように、衛生管理や分割勤務は常に入れなければいけない。
また、製造現場でよくある5Sに「信頼」を加えて6S にすることも大切。相互コミュニケーションでケアしなければ、効率も従業員のモチベーションも下がる。優秀な社員をどのように維持するか、長期的にどうコミットメントを示して雇い続けるかを考え続けなければいけない。
「転禍為福」(禍転じて福と為す)をBCP の概念として実践するには、小さな事案対応から柔軟性をいかに積み上げていくかがポイントになる。そして、転換を躊躇しないこと。とにかく元に戻るのではなく、この際だから今こそ方向ややり方を変えようということは、レジリエンスの実現と捉えていいと思う。
今回の新型コロナも含め、災害、事故、事件による被害を防ぎ切ることは不可能。タイミングや場所を外すような縮退、来るなら来いではなくて、ちょっと避ける、外す、かわすということ。
今回は縮退の期間をどれほど継続しなければならないのか分からず大変難しい状況ではある。しかし、戦略的回避として、地域のタイムラインをつくり、電車の運休や学校の閉鎖、企業の休業といったタイミングを合わせる取り組みは必要不可欠。地域全体の利害関係者が段取りよく同期すべきだが、通常時から柔軟性がないとできないこと。大上段に構えて、一気にことを進めるのではなく、変えるべきことを少しずつ変えて、試行錯誤をしながら日々積み上げていけばいいのではないかと思う。
https://www.risktaisaku.com/feature/bcp-lreaders
名古屋工業大学大学院 社会工学専攻教授/リスクマネジメントセンター防災安全部門長
渡辺 研司 氏(わたなべ・けんじ)
1986年京都大学卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)入行。プライスウォーターハウス・クーパースを経て2003年より長岡技術科学大学助教授、2010 年より現職。内閣官房、内閣府、経済産業省、国土交通省他の専門委員会委員、ISO/TC292(セキュリティ&レジリエンス)エキスパートなどを務める。
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