パワハラ防止法の対象にもなるコロナ問題
第21回 コロナハラスメントをなくせ!
株式会社フォーサイツコンサルティング/
執行役員
五十嵐 雅祥
五十嵐 雅祥
千葉科学大学危機管理学部 非常勤講師、(一財)レジリエンス協会幹事。1968年生まれ。外資系投資銀行、保険会社勤務を経て投資ファンド運営会社に参画。国内中堅中小製造業に特化した投資ファンドでのファンドマネジャーとしてM&A業務を手掛ける。2009年より現職。「企業価値を高めるためのリスクマネジメント」のアプローチでコンプライアンス、BCP、内部統制、安全労働衛生、事故防止等のコンサルティングに従事。企業研修をはじめ全国中小企業団体中央会、商工会議所、中小企業大学校等での講師歴多数。
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□事例:37.2度の発熱があった社員
(1)IT企業のコールセンターに勤務しているAさんは、先日体調を崩し3日間ほど会社を休みました。37.2度の発熱に加え、せきが出る症状もあったことから新型コロナの感染も疑われましたが、周りに濃厚接触者もおらず、翌日には熱も下がったため、自宅で安静にしていました。念のためにAさんは地域の「新型コロナコールセンター」に連絡し、最寄りの保健所の相談窓口の連絡先を教えてもらい電話相談も行いました。しかしながら、他の感染者との接触履歴の有無、およびAさんの現在の症状などから「受診は不要」と判断され、PCR検査などは受けられませんでした。翌日には熱も下がり、せきも収まったので、会社に出社しようと思いましたが、念のためのもう一日大事を取った後、出社しました。
ところが、出社したAさんに対する周りの同僚からの反応は次のようなものでした。「検査もしないで出社するなんで、私に感染したらどうしてくれるんだ!」「こんな時期に体調を崩しておきながら、よくすぐに会社に来れるね。なんて無神経なんだ!」
まるでAさんが感染者であると決めつけるようなせりふを言う人が一人や二人ではありませんでした。Aさんは、保健所にも相談したことや「受診は不要」と言われたことなどを説明しようとしましたが、聞く耳をもってくれません。なかにはAさんの座席から遠ざかる人や「怖いから近寄らないでほしい」という人もいて、いたたまれなくなったAさんはその日は会社を早退。その後、出社することが怖くなり、このまま会社辞めようと思っています。
(2)酒類販売会社の営業管理職であるBさんは、将来の幹部候補生として将来を嘱望されていました。ところが1カ月ほど前にBさんの奥さんにコロナウイルスの感染が発覚ししました。奥さんは介護施設で調理補助のパートをしていましたが、その介護施設でクラスターが発生したため、集団検査で奥さんの陽性が判明したのでした。そして濃厚接触者であるBさんも検査を受けたところ「陽性」と診断されてしまいました。
隔離期間を終えたBさんが出社すると、周りのBさんを見る目が変わっていました。「こんな時期に陽性になるとは、自覚が足りない」「奥さんの管理もできない人間に管理職が務まるのか?」とはっきり口に出す人がいたのです。また、これまで目をかけてくれた社長からも「君には期待していたのだが、今回のことで自己管理ができない人間だと思わざるを得ない」と言われてしまったといいます。Bさんは「このまま会社に居ても、出世の目が消えてしまった。いっそのこと転職した方がいいのだろうか?」と悩んでいます。