テロ・治安リスク保険

テロ・治安リスク保険という言葉は聞き慣れないかもしれません。なぜなら、日本企業でこの保険を契約しているところはごくわずかでしかないからです。

日本国内では巨大災害といえば地震リスクですが、世界レベルで見るとテロ・戦争・内乱・暴動などの治安リスクの方が巨大災害につながるリスクです。日本は極めて安全な国なのでピンとこないかもしれませんが、グローバルでビジネスを展開する日本企業にとってはしっかりと着目しなければなりません。地震と同様、めったに起きないけれど、起きたら大変なことになるタイプのリスクだからです。

日本の地震リスクは一般的な財物保険では補償対象外となっていますが、同様にテロ・治安リスクもほとんどの国の一般の財物保険では補償対象外です。これらのリスクをヘッジするためには、別途テロ・治安リスク保険に加入する必要があります。グローバルな保険マーケットでは一般的な保険であり、多くのグローバル企業が加入している保険です。

しかしながら、日本の保険会社が普通に販売している保険商品にテロ・治安リスク保険はラインアップされていません。日本は安全なので国内リスクとしてはニーズがないことも一因でしょうが、日本の保険会社が再保険の手当てをできていないことが最大の理由と考えられます。

地震保険同様の手法で、海外の再保険マーケットを活用すれば日本企業もテロ・治安リスク保険に加入できます。

東証一部上場企業の54%が地政学リスクすなわち治安リスクを有価証券報告書上で事業などのリスクとして開示しています。リスクとして認識し、開示までしているのに、何の手当てもしていないとなると、経営としては大きな問題です。しかも、保険会社が引き受けたがらないリスクは、企業にとっても抱えておくべきではないリスクと言えるでしょう。

有価証券報告書でリスクとして開示している企業は、海外の再保険マーケットを活用したテロ・治安リスク保険も検討しておくべきです。

 

本連載執筆担当:ウイリス・タワーズワトソン 関西支店長 兼 グローバルプラクティス ディレクター 大谷和久