2020/09/30
グローバルスタンダードな企業保険活用入門
再保険を使った特殊なリスクへの対応
海外の再保険マーケットにはプレイヤーである再保険会社が数多くあり、キャパシティー(引き受け能力)も十分に確保できます。日本企業が直接海外の再保険マーケットにアクセスすることはできません。しかしウイリス・タワーズワトソンのようなグローバルでビジネスを展開している、海外の再保険ブローカーを活用すれば、海外の再保険マーケットの潤沢なキャパシティーを活用することができるのです。
地震保険
日本企業にとっての巨大リスクの筆頭は、地震リスクです。しかしながら、本連載の第6回「財物保険活用における日本企業の問題点」でも触れましたが、日本企業の地震保険加入率は財物リスクで30%、事業中断リスクでは3%とほとんど普及していません。住宅の地震保険付帯率は63%とかなり普及していますが、この違いは再保険制度も一つの理由と考えられます。
住宅の地震保険は実質的には日本政府が再保険の引き受けをしていますが、企業保険にはそれがありません。保険会社は自社でリスクを抱える必要があるため地震保険の積極的な販売には及び腰になる傾向があると言えるでしょう。
逆に言えば、任意再保険の手配ができれば、企業も地震保険加入への道が開けると言えます。
どうして日本の保険会社は地震保険の引き受けに消極的なのでしょうか?
日本の保険会社はそのビジネスのほとんどを日本国内で行っています。日本の保険会社が引き受けている地震リスクはほぼ100%日本国内のリスクであり、集中リスクなのです。もし日本国内の地震リスクを大量に抱えていたら、ひとたび日本国内で大地震が発生した時には保険会社は壊滅的な損失を被ってしまうでしょう。
日本の保険会社も積極的に海外進出を試みていますが、まだ発展途上です。いまだ圧倒的に国内ビジネスが主流です。
一方、海外の再保険マーケットには世界のあらゆるところからリスクが持ち込まれ、それらを数多くのプレイヤーが分散して引き受けています。日本の地震リスクも「One of them」なのです。だから日本の保険会社では引き受けられない日本の地震リスクでも、海外の再保険マーケットを活用すれば保険手当てが可能になるのです。
具体的なフローの例としては、日本企業は、ウイリス・タワーズワトソンの海外の再保険ブローカーに海外の再保険マーケットのキャパシティー確保を依頼します。日本の保険会社は、ウイリス・タワーズワトソンの再保険ブローカーがその企業のために用意したキャパシティーを活用するため、再保険会社と再保険契約を締結します。日本企業が契約する地震保険は、あくまでも日本の保険会社との契約となります。
海外の再保険マーケットを活用する手法で、新規に地震保険を契約した日本企業や既存の地震保険の増額を図った日本企業はいくつもありますので、ぜひ検討をしてください(図1参照)。
グローバルスタンダードな企業保険活用入門の他の記事
- 第10回 新型コロナウイルスにより増大するリスクと保険
- 第9回 再保険の手配が必要な特殊な保険
- 第8回 経営リスクに関する各種保険
- 第7回 グローバル企業にとっての賠償責任保険の留意点
- 第6回 財物保険活用における日本企業の問題点
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月23日配信アーカイブ】
【4月23日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:南海トラフ地震臨時情報を想定した訓練手法
2024/04/23
-
-
-
2023年防災・BCP・リスクマネジメント事例集【永久保存版】
リスク対策.comは、PDF媒体「月刊BCPリーダーズ」2023年1月号~12月号に掲載した企業事例記事を抜粋し、テーマ別にまとめました。合計16社の取り組みを読むことができます。さまざまな業種・規模の企業事例は、防災・BCP、リスクマネジメントの実践イメージをつかむうえで有効。自社の学びや振り返り、改善にお役立てください。
2024/04/22
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方