与信リスク

新型コロナウイルスを原因とする倒産企業のニュースは世界中で頻繁に取り上げられています。現状では飲食業、ホテル業、アパレル関連など特定業種が多くを占めていますが、現在の経済停滞が長引けば製造業やサービス業などあらゆる業種において、企業倒産が多発していく可能性が高いと言えます。これは自社の取引先も例外ではなく、どこがいつ倒産してもおかしくない状況が起こりえると言えます。

その一方で、各企業とも現状の業績不振を打開するために何とかして営業拡大に注力したいという現状があります。新しいビジネスモデルを開発したり、新規の販路を開拓したりという営業努力が、そのまま売掛債権の焦げ付きリスクの増大に直結してしまうというジレンマに悩んでいる企業の与信管理担当者も多く存在していると思われます。新型コロナウイルスによる業績不振に大口の売掛債権の焦げ付きが重なったら、自社の存続にも影響を及ぼしかねません。

グローバル企業の場合、当然取引先も海外企業が多くなりますが、海外の取引先それぞれの経営状況を一企業の与信管理担当者がタイムリーに把握していくことはほとんど不可能でしょう。特に新型コロナウイルスによって経済環境が日々激変している今日においてはなおさらです。

保険を活用して与信管理のアウトソーシングを可能にするということは、日本企業ではあまり知られていません。グローバルにビジネス展開している信用保険の専門会社は、独自に築き上げた調査網を活用して保険の引受審査を行います。この保険会社の審査機能を自社の与信管理に活用できるのです。保険契約の際には取引先別に売掛債権残高を保険会社に通知しますが、保険会社の審査によっては一部の取引先については売掛債権満額の保険に加入できないことがあります。これはすなわち、その取引先との取引額を減らすとか、支払いサイトを短くするとかの何らかの取引条件見直しの措置が必要だということになります。

また、保険契約をしてからもある取引先の経営状況が悪化したら保険会社からアラートが発せられます。例えば90日以内に保険の支払限度額を半分に削減するなどの通知が保険会社から届いたら、その取引先は要注意であり、90日の猶予期間のうちに取引条件の見直しを図るというような措置が取れるのです。

もちろん、アラート前に取引先が倒産したら保険金が支払われるので債権保全が確実にできます。保険会社を与信管理のアウトソーシングとして活用し、保険料を与信管理コストとして位置付けることにより、安心して営業拡大を図ることができるのです。