2017/12/15
防災・危機管理ニュース

内閣府は14日、「災害救助に関する実務検討会」の第5回会合を開催。道府県から一部権限を希望する政令指定都市に移譲する災害救助法改正の方針を盛り込んだ最終報告をまとめた。2018年1月からの次期通常国会での法案提出へ調整を続ける。政令指定都市が仮設住宅など費用を負担し実行主体となる代わりに、道府県から権限を移譲され国と直接協議もできるようにする。
災害時、都道府県は広域調整機能を持つ。仮設住宅や支援物資といった市区町村への資源配分などを行い、国との協議も行う。しかし2011年の東日本大震災では宮城県と仙台市が仮設住宅の整備の遅れについてお互い責任を追及。2016年の熊本地震でも災害救助の役割分担などで熊本県と熊本市が対立した。
内閣府案では災害救助法改正の方向について、都道府県と同等の災害対応力があると認められ、希望する政令指定都市については救助主体として認定する指定制度を創設する。仮設住宅整備や被災者への生活必需品の給与といった被災者への対応権限を、費用を政令指定都市が負担し実行する代わりに道府県から移譲を受ける。
また該当する政令指定都市は救助内容について国と直接協議できるようにする。例えば建設型仮設住宅の費用は戸あたり551万6000円以内となっているが、人件費や資材費の高騰で基準内に収まらない可能性がある。こういった場合、政令指定都市が基準の弾力的運用について国と交渉できる。
一方で都道府県の広域調整機能も改正で明確化する。市区町村相互間の連絡調整のほか、資源配分機能といった都道府県の役割・機能を定める。権限移譲にあたっては、道府県と政令指定都市間での同意が必要となる。
この権限移譲の指定制度創設について、都道府県側は反対の姿勢を崩していない。内閣府では「権限移譲を行っても資源調達・配分計画は道府県が策定し、政令指定都市もその計画の下で救助を実施するので、権限移譲された指定都市が資源の先取りを行うことはない」と説明。今後も調整を続け、特に都道府県に対しては広域調整権についての明記など説明を丁寧に行い、次期通常国会での災害救助法改正案提出を目指す。
■ニュースリリースはこちら
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/saigaikyujo/index.html
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
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