第128回:コミュニティーのレジリエンスの測定方法に関する研究の現状とこれから
Hoang Long Nguyen他 / Modelling, Measuring, and Visualising Community Resilience: A Systematic Review
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より(株)インターリスク総研、(株)サイエンスクラフト、ミネルヴァベリタス(株)にて事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。国際危機管理学会(TIEMS)日本支部理事。一般社団法人レジリエンス協会幹事(組織レジリエンス研究会座長)。環境経営学会幹事(企業の気候変動に対する「適応」研究委員会メンバー)。政府会計学会会員(社会リスク研究部会メンバー)。
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今回紹介させていただく論文(注1)は西ノルウェー研究所(注2)の研究者が今年発表したもので、コミュニティーのレジリエンスのモデリング、測定、および可視化に関する研究の系統的文献レビューである。本論文の著者は同研究所で「地域コミュニティーの革新によるレジリエントなヨーロッパと社会」(Resilient Europe and Societies by Innovating Local Communities)という研究プログラムに取り組んでいるメンバーである(注3)。
本論文では、次の5つをリサーチクエスチョンとして、2000年から2020年の間に発表された文献を対象としてレビューが実施されている。
1. コミュニティーレベルのレジリエンスに関して、どのような研究、プロジェクト、およびツールが既に存在するのか?
2. それらはどのような種類の脅威、ハザード、ショック、災害などを対象とするのか?
3. それら(の研究、プロジェクト、ツールなど)では、レジリエンスの要素(components)や特性(properties)として、どのようなものが、いくつ定義されているのか?
4. それらはコミュニティーのレジリエンスをどのように測定するのか?それらは定性的なエビデンスを用いるのか、定量的な指標(indicators)を用いるのか、それともこれら両方の組み合わせか?
5. コミュニティーのレジリエンスの情報を表現するための適切な可視化技術(visualisation techniques)は何か?
なお文献の検索においてはGoogle Scholar、Scopus、Web of Science、およびScienceDirectといった文献データベースが利用されている。また「コミュニティーのレジリエンス」に関連して、「都市のレジリエンス」(urban resilience)や「地方のレジリエンス」(rural resilience)という観点での研究もあることから、これらもキーワードに含めて検索が行われ、前述のリサーチクエスチョンに関連する77の文献が抽出されている。