人の途絶えた夜の東京(写真:写真AC)

新型コロナウイルス感染症は2019年12月に中国の武漢で発症し、2020年3月にWHOがパンデミック宣言、同年中に地球上全大陸に蔓延していった。2020年12月において、一部の国で鎮静化したと言われているが、地球的規模ではいまだ増加しつつある。

我が国では昨年1月に感染者第1例が確認され、4月に第1波、8月に第2波、そして12月に第3波を迎えるに至り、12月下旬の現在は予断を許さない状況にある(その後、今年1月7日に1都3県に緊急事態宣言再発令、13日には7府県を追加)。

本稿では、連載第2回の[図5]社会的免疫進化システムを[図8]のように「トップダウンVSボトムアップ」の骨子を基本とする簡明なモデル化を行い、本図をベースにコロナ禍における種々の対応策に考察を加えよう。

発症の経緯と我が国で喫緊とされる課題

画像を拡大 [図5]社会的免疫進化システム・感染症対応(第2回から再掲)

現在の状況は、重症者数が重症者病床数を超えて、医療崩壊が目前に迫っている。早急に重症者病床数を増す必要があるが、病床はあっても医師と看護師が不足しており、政府や都道府県知事のトップダウン側はその補充に腐心している。第3波は第1波以後予想されていたことで、その間での医療資源拡充への不作為が問われている。

同時に、重症者数を増やさないようにする必要があり、住民に外出等の自粛を、そして業者に営業制限を呼び掛けているが、業者に対しては補償を与えなければならない。

思えば、直近の感染症歴として、インフルエンザウイルスによる1918年~1920年のスペイン風邪と2001年の新型インフルエンザがあり、コロナウイルスによる2002年~2003年のSARS、2012年~のMERSがある。トップダウン側としてそのような経験をなぜ生かさなかったのか、準備してこなかったのか、ということも問われよう。

近年、感染症の研究体制や感染症対応の医療資源の削減が進められてきたことを考えあわせれば、単なる不作為という言葉だけでは済まされない。これまでの経費削減のツケが今日の補償額や景気減速による富の喪失として回ってきたとすれば、その差額の検証を行うことが[図8]の免疫防災システムの進化をもたらすことになる。

画像を拡大 [図8]免疫防災システムの骨子及びキーワード

新型コロナ感染症の特殊性と急がれたワクチン開発

周知のように、新型コロナ感染症は従来のインフルエンザ感染症と異なった特性を持っていることが分かってきた。

①感染後の潜伏期間が長く、発症の以前から感染する②空気感染する③気管や血管、肺だけでなく他の臓器や脳までも侵されることがある④余病のある高齢者が感染すると病状は急変し死に至ることがある⑤治癒後、再発することも後遺症が残る場合も多い⑥感染してゆく大陸によって遺伝子が変化する、などである。

一言で言えば、極めて不気味な症例である。

これらは、各国各地の病院、大学、研究所などで治療や研究を通じて得られ、国内外の学会論文報告によって公にされ集約された知見である。すなわち[図8]の右側のボトムアップ型の自発的創発的対応、すなわち獲得学習免疫によるものである。