2021/03/31
組織の生産性を上げるエンタープライズ・リスクコミュニケーション
遡ること10年前の3.11当日、新日本プロレスは、今後のスケジュールの対策を練り、その翌日12日に開催される大会を含めた3大会を延期する発表をしました。 そして13日に、静岡で大会を開催する決断をしています。色々なエンターテインメントが自粛を迫られていた時期だったので、これはとても大きな決断だったと想像に難しくありません。
注目された大会には、超満員札止め(2,250人)の大観衆が詰めかけました。大会前、先に発生した「ニュージーランド地震」、「東北地方太平洋沖地震」の被害に対する義援金募金活動を棚橋選手が先頭に立って行いました。
3.11以降、新日本プロレスは『KIZUNA ROAD』というタイトルで被災地を周り、プロレスラーによるボランティア活動を行ってきました。
選手たちと新日本プロレスが称賛を浴びた迅速なリスクコミュニケーションができた背景には、3.11当日に、迅速に対策が練られ、方針を発表できた体制や、このような活動の経験も大きく関係しています。 新日本プロレスは有事に対応する素地が整っていたのです。
また、プロレスを通し、被災地に希望を与える活動を通して、選手らのリスクに対する意識が高くなり、不安によりそう行動につながったのだと思います。新日本プロレスでは、今回の件をうけて来場者が帰宅困難になった場合の対応を、さらに追加検討する予定を立てているといいます。
私たちが所属する組織でも、同じように危機に強い体制になるために備えることができます。これはまさにエンタープライズ・リスクコミュニケーション(ERC)の取り組みの一環なのです。
そのためには組織の中で最低限、次の項目は決めておくことが必要です。
・組織が抱えるリスクはどのような種類があるか?
・リスクに対して、これが危機にならないようにどう対応するか?
・リスクから危機モードの切り替えのタイミングをいつにするか?
・組織に危機起きたときの5W1H
— 誰が誰に何を報告し、どこに集まるか?
— 集まる場合、いつ誰がどこに集まるか?
— 集まった時に何をどのような基準で決めるか?
— どのステークホルダーとコミュニケーションをとる必要があるか?
— どうやって原因究明をするのか?
— 被害者への情報発信や、メディアその他ステークホルダーへの情報発信はどうする?
これらをスムーズに実現するためには、いくつか仕掛けやポイントがあります。次回の連載ではこれらを、ERC初心者のための3つのステップと題して解説していきたいと思います。
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