2016/11/10
誌面情報 vol49
・具体的にどう工夫したらいいのでしょうか。
個人的な意見になりますが、今のこととして、受け止めやすいことから伝える工夫が必要だと思います。
極論かもしれませんが、ビジネスマンなら「生命の危機」「ビジネよりスの危機」のほうが、時系列で考えれば、自分に関係があると受け止められやすいかもしれません。防災で命が大切ということは当然ですし、そのことは誰も否定しません。
しかし、例えばパソコンを机の上に出しっぱなしで帰宅して、地震の際、落下物でパソコンが壊れ、すべてのデータを失ってしまい、それが理由でお客様に提案書が出せなくなり売り上げを落としたということを考えてもらった方が、対策に移しやすい。
この方が「今起きそうな問題として、自分に関係がある」と感じやすいのです。そう感じれば「毎日電源を落としてから帰ろう」「データはバックアップしよう」ということになります。これも防災対策の中では重要なことでしょう。

おそらく、東日本大震災でも首都圏では、自分の生命に危機を覚えた人は少ないのが実態ではないでしょうか。
あれだけ大きな地震が起きたにもかかわらず首都圏の被害は限定的だった。それが一般的な感覚だと思います。もちろん次も同じ状況で済まさせるとは限りません。ですから、災害に対する危機管理を推進する方法としては「今やらなくてはビジネスマンとして死にますよ」と教える。そこから少しずつ危機意識をステップアップさせていく長期的な視点が重要になると思います。
・まず、身近なビジネス的な視点で興味を持たせて、その後、危機意識をさらに高めさせていくということでしょうか?
私が勧めるのは長期の状態目標と短期の行動目標を設定する方法です。長期の状態目標とは、期間を限定して、社内をこうしたいという目標を定める。例えば、すべての社員が家庭でも耐震や家具の転倒防止、備蓄をして、家族とはいつでも連絡が取り合える体制が整っているというような目標です。
多くの人はこうした設定が大好きです。“1年の計は元旦にあり”で、今年こそは英語を身につけるとか、ダイエットするとか、誰にでも身に覚えがありますよね。でも達成できない。なぜなら今日何をやるのか、具体的な行動目標がないからです。ですから、短期の行動目標として小さな目標をつくって確実に達成して進めるのがコツです。
10㎏痩せますと目標を立てても、うまくダイエットできないのは、日々の成果が見えないから。毎月1㎏ずつ痩せる目標なら継続しやすいと思いますが、結局、ゴールが遠くて止めてしまう。
防災でもスモールステップをつくって、実行させることが大事ではないでしょうか。例えば、まずは全員がパソコンの電源を落として帰宅するところから始める。それが徹底できたら、どれだけ社内状況が変わったのか取り組み前後の変化を確認して成果を認識してもらい、その次に、家庭での備蓄をするなど、ステップ・バイ・ステップで進めていくことが大事だと思うのです。
誌面情報 vol49の他の記事
- 市民によるトリアージで町を救え
- 仏商工会議所が首都直下地震のBCP
- 避難訓練だけを繰り返しても意味がない
- 『分かりやすい』伝え方 防災では定義が広すぎる
- なぜルールは破られる?気付きと動きで安全文化を構築
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/09/02
-
-
-
ゲリラ雷雨の捕捉率9割 民間気象会社の実力
突発的・局地的な大雨、いわゆる「ゲリラ雷雨」は今シーズン、全国で約7万8000 回発生、8月中旬がピーク。民間気象会社のウェザーニューズが7月に発表した中期予想です。同社予報センターは今年も、専任チームを編成してゲリラ雷雨をリアルタイムに観測中。予測精度はいまどこまで来ているのかを聞きました。
2025/08/24
-
スギヨ、顧客の信頼を重視し代替生産せず
2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。
2025/08/24
-
-
-
-
ゲリラ豪雨を30分前に捕捉 万博会場で実証実験
「ゲリラ豪雨」は不確実性の高い気象現象の代表格。これを正確に捕捉しようという試みが現在、大阪・関西万博の会場で行われています。情報通信研究機構(NICT)、理化学研究所、大阪大学、防災科学技術研究所、Preferred Networks、エムティーアイの6者連携による実証実験。予測システムの仕組みと開発の経緯、実証実験の概要を聞きました。
2025/08/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方