2016/11/10
誌面情報 vol49
・なぜスモールステップが重要なのでしょうか。
私は「やる気」というものは有限だと考えています。実際、目に見えないものですし、多くの人はそんなイメージは持たないと思いますが、本当は「使ったらなくなる」んです。3日坊主というのは、やる気を使い果たした結果起きる現象です。東日本大震災の直後なら、まだ防災に取り組むやる気があったかもしれませんが、それも時間経過とともに少なくなり、今では意識が薄れてやる気もなくなっている。
やる気が持続しないのなら、燃え尽きないうちに習慣化させることが重要です。やる気のあるうちに小さなことからコツコツと積み重ね、習慣化させるのです。こんな些細なことなのかと思うくらいでもいい。やる気が「0」でも当たり前のこととしてできるように習慣化できれば、対策のレベルは上がったことになります。できたら次の行動をプラスする。その積み重ねでやる気を消費せず習慣化させ、継続した取り組みにしていくのです。
・組織というものを考えれば、命令というのも有効な方法でしょうか?
トップダウンの命令で実行させることも、「伝え方」としては有効です。災害時の連絡手段の確保が目的なら、上司の命令で、全員に対して一斉にTwitterのアカウントを取得させるようなこともできるはずです。組織のコミュニケーションのあり方としては、上意下達のような命令は極めて効果があるのです。ただし、これに頼りすぎると、社員が疲弊し、一時的に整備された防災の仕組みも、知らず知らずのうちに形骸化するなんてことにもなりかねません。上からの命令と、下からの意識を変える、両方をうまく組み合わせることがポイントになるでしょう。
・説明する担当者が陥りやすいポイントはありますか?
タイプ別にみると、①専門用語を多用して話す学者タイプ、②説明する順序がバラバラで伝わらないタイプ、③アキバのオタクみたいに自分の話は面白いと思って熱中して話し、相手を置いていくタイプ、④自信がないからぐちゃぐちゃと話して、結論から言えない「迷える子羊タイプ」がいます。
それぞれに課題が違うので一概にここを直せばいいとは言えないのですが、元をたどれば冒頭に話した3つが抑えられていない。そこから派生していると思います。
経済ジャーナリスト、一般社団法人教育コミュニケーション協会代表理事
慶應義塾大学経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。学生時代から難しいことを簡単に説明することに定評があり、大学時代に自作した経済学の解説本が学内で爆発的にヒット。現在も経済学部の必読書としてロングセラーに。相手の目線に立った話し方・伝え方が、「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・団体向けに「説明力養成講座(わかりやすく伝える方法)」を実施している。フジテレビ「とくダネ!」、関西テレビ「ゆうがたLIVEワンダー」レギュラーコメンテーター、NHK「ニッポンのジレンマ」、Eテレ「テストの花道」などメディア出演多数。『今までで一番やさしい経済の教科書』、『カイジ、「命より重い」!お金の話』など著書多数、、累計120万部。
誌面情報 vol49の他の記事
- 市民によるトリアージで町を救え
- 仏商工会議所が首都直下地震のBCP
- 避難訓練だけを繰り返しても意味がない
- 『分かりやすい』伝え方 防災では定義が広すぎる
- なぜルールは破られる?気付きと動きで安全文化を構築
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方