2021/09/11
危機管理担当者が最低限知っておきたい気象の知識
ポイント3.見えている場所だけが危険ではない
ライブカメラで川の様子を確認する際の2つ目のポイントは、映像で見えていない場所にも注意が必要だという点です。ライブカメラが設置される場所は橋や水位観測所付近などであり、河川全体の中から見れば「点」に過ぎません。
実際には河川は水防上の問題が山積みです。主要な河川であっても計画通りに堤防整備が完了していることはまれで、暫定的な高さや強度しかない堤防や無堤防の状態となっている区間などがあります(図参照)。例えば国が直轄管理する荒川でも整備済みの堤防は全体の71.3%止まりで、暫定的な堤防の区間(暫定断面堤防区間)は24.5%、無堤防区間に至っては4.3%という数字です。
河川の堤防網の中には整備が終わっていないところの他にも、川にかかっている鉄道や道路の橋が堤防の高さよりも低く、水が増したときに流れを妨げるような場所などもあります。河川のさまざまな弱点は「重要水防箇所」という図面で一般公開されているので、河川名と重要水防箇所をキーワードとして一度検索してみてください。次の図は荒川の重要水防箇所を調べた例ですが、色で示されているところは何らかの弱点がある部分です。
上の図を見ると、ほんの数キロというわずかな区間であっても、重点的に水防対応が必要な場所が多数あることが分かります。この図の真ん中から少し左側には埼玉県川口市と東京都北区を結ぶ橋(図中に赤字で新荒川大橋と書かれたもの)がありますが、国が配信しているライブカメラの画像はちょうどこの橋から下流部を映した様子です(下図参照)。
この新荒川大橋に設置されたライブカメラで確認できるのは川や堤防のごく一部だけです。ライブカメラで写っていないその他の場所で何が起こっているかまでは画像からは確認ができません。例えば先ほどの重要水防箇所の図では、新荒川大橋の左隣(上流部)にあるJR東北線の橋付近が越水や溢水(いっすい)の危険箇所と指摘されていましたが、このライブカメラではそこがどうなっているかは知ることはできないのです。
ライブカメラで川の様子を参考にするときには、全体の中のごく一部しか見えていないという限界を常に念頭に置いて利用してください。ライブカメラでは異常がないように見えたとしても他の場所では危機的なことが進行している可能性が排除できないため、ライブカメラだけに頼って対応を判断するのは避けた方がよいと言えます。
ライブカメラは非常に便利なツールですが、川の特性を知った上で利用することや、限界もあることなどを知った上で使うようにしていきましょう。ライブカメラの使い方については他にもいくつかポイントがありますので、後編で改めて紹介していきます。
(続く)
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