2023年は記録的に暑い夏となりました。猛暑日が続く一方で、線状降水帯も6月以降全国各地で発生し、氾濫や土砂災害などによる被害が相次いでいます。温暖化の進展に伴って、極端な暑さ、極端な雨量、そして台風の勢力の増加が見込まれています。異常気象の時代を迎えつつある今、改めて気象情報の使い方を振り返る意味で、熱波、線状降水帯、台風に関する情報を使う際のポイントを説明していきます。

高温・熱波に関する情報の使い方

高温や熱波に関する情報として馴染みが深いのは、2021年に全国を対象に発表されるようになった「熱中症警戒アラート」だと思います。熱中症警戒アラートは「暑さ指数」の値が33以上と予測された場合に都道府県単位で発表されます(北海道や離島を含む鹿児島・沖縄はより細分化されたブロック単位)。

発表基準として使われる「暑さ指数」とは、気温、湿度、日射・輻射などの熱環境の影響を織り交ぜた数値です。熱中症警戒アラートの発表基準は暑さ指数33ですが、暑さ指数が28以上となると実際には熱中症患者が増えます(下図参照)。このため、「熱中症警戒アラートが出ていないから今日は大丈夫」と誤解しないようにしてください。特に普段から気温が低い北海道・東北・北陸地方では暑さ指数30前後の段階から熱中症関係の救急搬送者が大量に出ているという分析結果もあるため、「熱中症警戒アラート」未発表の段階から特別な注意が必要となります。

画像を拡大 図1:日最高暑さ指数と熱中症患者発生率の分析結果。暑さ指数28を超えたあたりから熱中症患者が急増していることが分かる。(出典)環境省熱中症予防情報サイトより。 https://www.wbgt.env.go.jp/sp/wbgt.php

環境省の熱中症予防情報サイトでは、熱中症警戒アラートの発表状況の他、現在の暑さ指数や3日先までの暑さ指数の予測の他、主な場面(駐車場、交差点、バス停、子供、体育館など)に補正された暑さ指数も確認できます(下図参照)。社員の安全管理等に携わる立場の方や施設の管理者の方など、こうした情報をこまめにチェックしておかれると良いでしょう。

▼熱中症予防情報サイト(環境省)
https://www.wbgt.env.go.jp/sp/

画像を拡大 図2:環境省熱中症予防情報サイトにて確認した各地の暑さ指数。3日先までの暑さ指数の予測や場面ごとの暑さ指数などが確認できる。(出典)環境省熱中症予防情報サイトより。 https://www.wbgt.env.go.jp/sp/

環境省では来年度から一段上の情報である「熱中症特別警戒アラート」を発表する準備を進めています。「熱中症特別警戒アラート」の基準案としては「都道府県単位で、すべての観測地点において暑さ指数の予測値が35以上になった場合に発表する」方法が検討されています。熱中症関係における特別警報のようなものも準備されている点は押さえておきましょう。

熱中症警戒アラートは今日または明日の暑さを対象とした情報ですが、もう少し早い段階から高温・熱波の可能性を把握するための情報もあります。それが気象庁の「早期天候情報」や「2週間気温予報」です。

「早期天候情報」は、その時期として10年に1回程度しか起こらないような極端な高温の可能性が高まった時に発表されるもの、「2週間気温予報」とは地点ごとの最高気温、最低気温が把握できるものです。

▼早期天候情報(気象庁)
https://www.data.jma.go.jp/cpd/souten/?reg_no=0&elem=temp

▼2週間気温予報(気象庁)※「府県の情報へ」のボタンを押して詳細を確認
https://www.data.jma.go.jp/cpd/twoweek/?fuk=1

早期天候情報では高温の可能性がある地方や時期が(下図左)、2週間気温予報では平年値からの乖離具合や予測気温の振れ幅などが分かります(下図右)。2週間気温予報の表の中で赤色になっているところは10年に1度程度しか起きないような高温に見舞われる可能性がある期間です。これらの情報を使って、この先の傾向や特に注意・警戒が必要な期間を把握しておきましょう。

画像を拡大 図3:早期天候情報(図左)と2週間気温予報(図右)の発表例。(出典)気象庁ホームページより。