2022/02/07
雪氷災害対策の最先端
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気象庁の季節予報によると、2月上旬は北日本や東日本を中心に厳しい寒さが続きそうだ。中旬以降は気温、降水量とも全国的に平年並みの見込みだが、南岸を低気圧が通過すると太平洋側でも雪の降る可能性がある。防災科学技術研究所・雪氷防災研究センターの上石勲センター長に、雪氷災害予測の最先端を聞いた。
国・自治体・道路管理者向け
予測システムが試験運用の段階
雪氷災害を防ぐ予測の重要性が高まっている。気象庁では今シーズンから、6時間先までの降雪量と積雪深さの予報を発表するようになった。昨シーズンからは、交通障害を発生させるような短期的な大雪が見込まれるときに発表する「顕著な大雪に関する気象情報」の運用を開始している。
いずれも予測をきっかけに防災行動を促し、被害を未然に防ぐのが目的。背景には、大雪により相次いで発生した車両の大規模立ち往生がある。
2018年2月には石川県から福井県にかけて国道8号で約1500台、2020年12月には関越自動車道で約2100台、2021年1月には北陸自動車道で約1600台と、大規模立ち往生が短期間で3度発生している。いずれも解消まで数日を要し、物流の停止による社会的・経済的ダメージは大きかった。
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上石勲センター長
降雪だけではなく、雪や氷を原因とする災害の予測に取り組んでいるのが防災科学技術研究所・雪氷防災研究センター(雪氷研)だ。センター長の上石勲氏は「世界最大級の降雪施設を備える研究所で、積雪、着雪、吹雪、雪崩など雪氷が原因となる災害の予測に取り組んでいる」と説明する。
雪氷研が研究する降雪予測の特徴は、精度向上に雪粒子の影響を加味している点。新潟県の複数の地点で実際に降ってくる雪の粒子とレーダー観測値を照らし合わせることで、雪粒子の違いと降雪量との関係が明らかになった。そのうえで上石氏は、降雪予測の困難さをこう話す。
「気温と湿度、地形、低気圧の位置、寒気の入り方などが複雑に関わっている。必ずしも気温が0℃以下で雪が降るわけではなく、2℃でも雪が降ることがある。雪が降るのか雨が降るのかの境界は、わずかな違いしかない。しかも大気は動く。降雪を正確に予測するのは至難の業。今後も研究を進めることが重要です」
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日本海側の降雪は大まかにつかめる
予測のベースになるのは実際の降雪の観測。雪氷研ではその体制を、国や自治体、大学、企業と協力しながら拡充している。雪の多い新潟県長岡市との協力で、市内数十カ所の消雪パイプの降雪センサーにIoT機器を設置した。
消雪パイプとは、道路上の雪を溶かすために地下水をくみ上げて道路に流す装置。センサーはそこで、気温や降雪強度を観測する。効率的な除雪車の運用を目的として実施されたプロジェクトだ。
降雪や積雪が少ない地域は、雪の観測設備がわずかしかない。気象庁のアメダスでは雪の観測地点が東京都内に1カ所しかなく、首都圏でも19カ所。防災科学技術研究所は積雪により物流に大きな影響を受けるセブン-イレブンと2016年に連携協定を結び、首都圏の約10店舗の屋根に積雪の重さと高さを測るセンサーを設置してきた。
防災科研は雪粒子を観測する設備も増強している。新潟や山形など雪の多い地域だけでなく、東京都八王子市や千葉市、さいたま市など首都圏5カ所に設置。日本海側のデータをもとにした降雪予測を関東で活用すると精度が低いためだ。両地域では降雪のメカニズムが異なり、降る雪の性質も違う。
上石氏は「日本海側の降雪予測は西高東低の気圧配置で発生する筋状の雲の行き先を完全に予測するのが難しいが、雪が降るかどうかは大まかにつかめる。関東の雪は要因の微妙な変化で降ったり降らなかったりする。そこが非常に難しい」と語る。
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