2018/06/15
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
まだ発見されていないお子様たちが番号で呼ばれてしまうのだということに、判例文とはそういうものとわかっていても、個人的には、どうにもやりきれない気持ちになってしまいます。
「交流会館」は地図でみていただくと大川小学校のすぐ隣ですね。学校からそれだけの距離しか移動できてないのです。先頭のお子さんが避難開始から移動した距離は150m、津波から避難した時間はたったの1分です。14時46分の地震発生から津波到達の15時37分までの時間は51分でした。
ここで地裁判決は、「地震及び津波に関する一般的知見」としてこんなことも書いています。津波防災を学ぶ人は誰でも知っておくべき内容です。
津波の水位が人の膝を超えると,歩行速度が低下して移動の自由が奪われ,1mの水位で人命に確実に影響するようになり,2m程度以上では確実に死者が発生し,増加する。物的被害としては,津波の高さ1mで木造家屋の部分破壊が起こり,2m程度以上で木造家屋に全面破壊をもたらし,3mを超えると急激に被害率が上がり,極めて重大な災害が発生するおそれがあるとされる。津波から身を守るには,避難が唯一の方法である。
ところで大川小学校は海から3.8kmあります。判例では以下の事実をもって過失を認定したわけではないのですが、こんな事にも言及しています
また、以下もこれをもって過失認定したわけではないのですが、当時のハザードマップの記載について具体的に紹介しています。
大川小学校のハザードマップでは津波浸水域として浸水の着色はされていませんでした。でも、注意書きではなく本文中に、「浸水の着色の無い地域でも,状況によって浸水するおそれがありますので,注意してください。津波に対してはできるだけ早く安全な高台に避難することが大切です」とは書かれていたのですね。
何度も言いますが、この事実をもって過失認定されたわけでないのです。そして後だから言えることなのではありますが、大人がこのハザードマップをもっと深く読み、考えていられたらなと悔しい気持ちになります。さらに、これまた、過失認定に使われた事実ではありませんが、このような記載があります。
平成22年8月4日開催の上記研修会は,石巻市総務部防災対策課のH危機管理監を講師とする「児童生徒の安全確保・文教対策」との演題での講話を内容として行われ,大川小学校から,D教頭,E教諭外1名が参加した。
この部分、防災を人に伝えている身としては、震災前にどのような防災講座が実施されていたか気になるところです。
上記、プロアクティブの原則の部分は、今読むと胸が痛みます。「疑わしいときは行動せよ,最悪の事態を想定して行動 (決心)せよ,空振りは許されるが見逃しは許されない」ということを亡くなられたD教頭と生存されたE教諭は聞かれていたのですね。
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