2018/06/15
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
そして,このほか原告らが主張するようなマニュアル改訂をすべき注意義務を教員に課すべき理由は認められないから,同注意義務違反をいう原告ら の主張は,前提を欠いたものとして,採用できない。
地裁判決は、マニュアル改訂の注意義務違反については否定しています。地震後の避難について地裁判決はどういっているのでしょうか?
児童を校庭に待機させたままにした点については、保護者のお迎えに対応していること、下校をみあわせるなどの安全確保のための必要な手段であることから、危機管理マニュアルにも則った適切なものだったとするのが地裁の結論です。
大川小学校がハザードマップ上、津波時の避難場所になっていたので、教員が放送を聞いて情報収集をしていても不相当ではないとしました。
この後、判決は、そうはいってもこれは過失と言えるという事例をだしてきます。「校庭で避難を継続することが具体的に危険」とわかれば避難しなければならないので、具体的な危険がわかっているのに、避難を怠れば過失になるという理由なのですが、3時30分以前の段階の出来事について、判例はいずれも「具体的に危険」とは、わからなかったとします。しかし、
このように,E教諭は,河北総合支所の広報車による呼び掛けを聞いたものであるが,これは,ラジオによる宮城県全般に関する情報などではなく,大川小学校に面した県道を走行中の広報車からの,津波が長面地区沿岸の松林を抜けてきており,大川小学校の所在地付近に現実の危険が及んでいることを伝えるものであった。
そうすると,この時点で,大川小学校の教員は,「宮城県内」という幅をもたせたものではなく,大川小学校の所在地を含む地域に対し,現に津波が迫っていることを知ったということができ,また,前記のとおり,長面地区から大川小学校が所在する釜谷地区にかけては平坦で,特に北上川沿いには津波の進行を妨げるような高台等の障害物もない地形であり,大川小学校の標高も1ないし1.5m前後しかないことからす ると,教員としても,遅くとも上記広報を聞いた時点では,程なくして近時の地震で経験したものとは全く異なる大規模な津波が大川小学校に襲来し,そのまま校庭に留まっていた場合には,児童の生命身体に具体的な危険が生じることを現に予見したものと認められる。
ということで、地裁判決は3時30分の時点で予見可能性を認めたということになります。
そして予見できたとしても、結果が避けられなければ過失ありとはいえません。結果は避けられたのか、結果回避義務について、まず、三角地帯が避難場所として適当であったかが検討されます。判例は、このように述べています。
このような位置関係からすると,三角地帯は,北上川からの距離は近いとはいえ,少なくとも大川小学校の校庭より標高が高く,また,北上川の状況を確認することができるという面において,津波襲来の危険がいまだ抽象的に予見されるにすぎない段階であれば,校庭と比較して,避難場所としては適しているといえなくもない。
適しているといえなくもない、という微妙な表現ですね。標高が7mあり学校校庭より高いので、具体的な危険がせまっていない段階では校庭よりはましという限定した言い方になっています。その後、しかしと続きます。
広報が聞こえているなら、学校周辺の状況がわかる教員には、三角地帯が危ないことはわかるから、三角地帯は、避難場所として適していないと判例はいいます。では、児童が授業でも登っていたという裏山はどう判断されているのでしょうか。
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方