2022/05/29
新首都直下地震被害想定
東京都が新たに発表した首都直下被害想定では、エレベーター被害について『強い揺れや停電等に伴い、最大約2.2万台のエレベーターが非常停止し、多数の閉じ込めが発生する』と書かれている。
東京都首都直下地震被害想定
「最大約2.2万台」―。この数字を見て、違和感を持った方はかなりの防災通であろう。平成24年の被害想定では最大7447台だった。この10年間でタワーマンションや新たなオフィスビルの建設が進んでこともあり3倍ほど増えた。しかし、2021年10月に都内で最大深度5強を観測した地震では、東京や埼玉で7万5000台が停止した。2018年6月に大阪府で震度6強を観測した地震では、近畿2府3県を中心として約6万3000台の停止が発生し、 そのうち、346台の閉じ込めが発生したとされる。今回の被害想定は都内の停止件数に限定されてはいるが、すでに大幅に上回る事態が発生していることになる。
都の被害想定を読み返せば、被害想定表には「閉じ込めにつながり得るエレベーター停止台数」とある。つまりは、この数は単に停止するエレベーター数ではなく、閉じ込めが発生する数として想定すべき数字だ。
実際に算定手法を見ると、閉じ込めにつながりうるエレベーターの停止台数の計算方法はかなり複雑で、大阪府北部地震で実際に地震時管制運転装置が作動して停止したエレベーターのうち 0.439%で閉じ込めが発生したことなどを考慮して算出されている。
ちなみに、大阪府北部地震では346件の閉じ込めの救出について87%が「3時間以内」に終えているが、最長「5時間半」を要したことが報告されている。単純に比較することはできないが、2.2万台ということは実に「60倍強」とういことになる。救出にかかる時間はどのくらいになるのだろうか? メンテナンスや保守点検要員の数は東京の方が多いかもしれないが、交通が混乱し、建物被害が多発し、そして、そもそも電話が輻輳して閉じ込めが発生していること事態が報告できない状況が続くことを考慮すれば、さらに深刻な事態も視野に入れなくてはいけない。
国土交通省住宅局建築指導課が令和2年7月にまとめた「エレベーターの地震対策の取組みについて(報告)」でも大阪府北部地震で救出に時間を要した理由は「公共交通機関の停止や交通渋滞による現場到着遅れ」「一般電話回線の輻輳による保守員への情報伝達遅れ」と明記されている。閉じ込められていることを連絡しようにも、電話が通じなかったわけだ。
では、企業はどのような対策をすべきか。
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方