2022/07/07
大規模災害時の通信障害とIT継続
通信リカバリーとIT-BCP
京都大学防災研究所巨大災害研究センター 畑山満則教授に聞く

1994年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士前期課程修了、2000年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博士後期課程修了、博士(工学)取得。同年から京都大学防災研究所に所属、研究員、助手、助教授、准教授を経て2016年から教授。情報通信技術やロボット技術を用いた防災の研究や災害ボランティア活動などと連携した災害対応の研究を行う。著書に「空間情報学」(コロナ社)など。
情報の実体はすでに散らばっている
首都直下地震の新たな被害想定で示されたシナリオでは、発災直後から通信は混乱。音声通話はもとよりメールやSNSも遅配が発生、その後も基地局電源の枯渇で不通エリアが拡大する可能性がある。通信環境が発達した社会ゆえにその影響も大きいが、大規模災害時、通信はどこまでカバーされるのか、企業が考えておくべきことは何か。京都大学防災研究所の畑山満則教授に聞いた。
すぐに通信のリカバリーに向かう動きはある
――首都直下地震の新たな被害想定で示されたインフラ復旧のシナリオでは、発災後から情報通信にかなりの支障が出ることが予想されます。
阪神・淡路大震災より以前、災害時のインフラ復旧はまず命の水、つまり水道が第一優先でした。しかしいまは電気が第一優先、当面の飲み水はペットボトルでしのぐようになっています。時代とともにインフラ復旧の優先度は変わります。
私は情報分野の出身なので、割と早い段階から、通信インフラ復旧の優先順位はもっと上がる、また上げるべきと思っていました。実際、東日本大震災では通信をどこに優先して使わせるかをコントロールしたという話がいくつもあります。
茨城県のある大学では、一時的に非常電源が使えるようになった際、第一に電力を供給したのが医学部の付属医療機関、第二が情報メディアセンターだったといいます。医療に次いで通信を優先した結果、ネットワークがつながり、スマートフォンを持っている人たちが情報交換して復旧を進めたり、大学に避難してきた人にWi-Fi をオープン化したり、ずいぶん役に立ったそうです。

いまはその頃からさらにインターネットが普及し、多くの人がスマホを持つようになって、リッチな通信環境の下で生活することが普通になっています。ということは、通信が使えないと混乱が収まらない環境にある。東京のような大都市ではその傾向がより顕著でしょう。
- keyword
- 通信障害
- 首都直下地震
- 00000JAPAN
- BCP
- IT-BCP
大規模災害時の通信障害とIT継続の他の記事
- 大規模災害時に通信はどこまで使えるか?
- インターネットが長期に渡りつながらない世界
おすすめ記事
-
入居ビルの耐震性から考える初動対策退避場所への移動を踏まえたマニュアル作成
押入れ産業は、「大地震時の初動マニュアル」を完成させた。リスクの把握からスタートし、現実的かつ実践的な災害対策を模索。ビルの耐震性を踏まえて2つの避難パターンを盛り込んだ。防災備蓄品を整備し、各種訓練を実施。社内説明会を繰り返し開催し、防災意識の向上に取り組むなど着実な進展をみせている。
2025/06/13
-
「保険」の枠を超え災害対応の高度化をけん引
東京海上グループが掲げる「防災・減災ソリューション」を担う事業会社。災害対応のあらゆるフェーズと原因に一気通貫の付加価値を提供するとし、サプライチェーンリスクの可視化など、すでに複数のサービス提供を開始しています。事業スタートの背景、アプローチの特徴や強み、目指すゴールイメージを聞きました。
2025/06/11
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/06/10
-
その瞬間、あなたは動けますか? 全社を挙げた防災プロジェクトが始動
遠州鉄道株式会社総務部防災担当課長の吉澤弘典は、全社的なAI活用の模索が進む中で、社員の防災意識をより実践的かつ自分ごととして考えさせるための手段として訓練用のAIプロンプトを考案した。その効果は如何に!
2025/06/10
-
-
緊迫のカシミール軍事衝突の背景と核リスク
4月22日にインド北部のカシミール地方で起こったテロ事件を受け、インドは5月7日にパキスタン領内にあるテロリストの施設を攻撃したと発表した。パキスタン軍は報復として、インド軍の複数の軍事施設などを攻撃。双方の軍事行動は拡大した。なぜ、インドとパキスタンは軍事衝突を起こしたのか。核兵器を保有する両国の衝突で懸念されたのは核リスクの高まりだ。両国に詳しい防衛省防衛研究所の主任研究官である栗田真広氏に聞いた。
2025/06/09
-
危険国で事業展開を可能にするリスク管理
世界各国で石油、化学、発電などのプラント建設を手がける東洋エンジニアリング(千葉市美浜区、細井栄治取締役社長)。グローバルに事業を展開する同社では、従業員の安全を最優先に考え、厳格な安全管理体制を整えている。2021年、過去に従業員を失った経験から設置した海外安全対策室を発展的に解消し、危機管理室を設立。ハード、ソフト対策の両面から従業員を守るため、日夜、注力している。
2025/06/06
-
福祉施設の使命を果たすためのBCPを地域ぐるみで展開災害に強い人づくりが社会を変える
栃木県の社会福祉法人パステルは、利用者約430人の安全確保と福祉避難所としての使命、そして災害後も途切れない雇用責任を果たすため、現在BCP改革を本格的に推進している。グループホームや障害者支援施設、障害児通所支援事業所、さらには桑畑・レストラン・工房・農園などといった多機能型事業所を抱え、地域ぐるみで「働く・暮らす・つながる」を支えてきた同法人にとって、BCPは“災害に強い人づくり”を軸にした次の挑戦となっている。
2025/06/06
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/06/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方