(出典:Shutterstock)

本連載の第190回で、英国に本拠地を置き、リスクに関する情報分析を手がけるVerisk Maplecroft社が2022年7月に発表した報告書「Environmental Risk Outlook 2022」を紹介させていただいた(注1)。これは気候変動やESG(環境・社会・ガバナンス)に関するリスクを扱った報告書であったが、そんな同社が2022年9月に「Political Risk Outlook 2022」を発表した。これは政情不安や治安などに関する国・地域別の評価結果をまとめたものである。

本報告書は下記URLにアクセスして、氏名やメールアドレスなどを登録すれば、無償でダウンロードできる。
https://www.maplecroft.com/insights/analysis/101-countries-witness-rise-in-civil-unrest-in-last-quarter-worst-yet-to-come-as-socioeconomic-pressures-build/
(PDF 30ページ/約 11 MB)


同社は政治的リスクや人権、環境などの分野を中心に、さまざまなリスク指数(risk index)を開発して各国のリスクを評価している。これらは同社が独自に開発し、評価しているものと思われ、それぞれのリスク指数の算出方法などは本報告書中にも同社Webサイトにも記載されていない(注2)

これらのリスク指数の中で、本報告書中で最初に紹介されているのは、社会不安指数(Civil Unrest Index)である。これは同社Webサイト上の情報によると、「経済、政治、または社会的要因に反応したデモや暴動などによってビジネスが悪影響を受けるリスク」(注3)を評価した結果とのことである。

図1はその社会不安指数が各国においてパンデミック前後でどのように変化したかを示したものである。縦軸が2022年第2四半期における社会不安指数(上に行くほどリスクが高いことを示す)、横軸は2020年第1四半期からの変化である(左に行くほどパンデミック前より悪化したことを示す)。例えば図1の最も左にある国は、縦軸がおおむね3程度、横軸が-4.4程度であるから、2020年第1四半期は7.4ぐらいだったということになる。

個々のプロットがどの国を表しているのかは分からないので、全体としての変化を掴むための図となっているが、表題のところに書かれているように、68カ国においてパンデミック前後で社会不安指数が悪化したのに対して、これが改善された国は30カ国にとどまるという。

画像を拡大 図1.  社会不安指数がパンデミック前後でどのように変化したか (出典: Verisk Maplecroft / Political Risk Outlook 2022)


読者の皆様の多くがお察しのことと思うが、このような変化の背景には、パンデミックに加えてロシアによるウクライナ侵攻の影響で、燃料費をはじめとする生活費全般が高騰したことが影響していると考えられている。